今回は、「ライフキャリアデザイン」についてお話します。
通常「キャリア」と聞くと、職歴だったり、役職だったり、はたまた転職といった「働くことに関連して」使われることがほとんどですが、「ライフキャリア」における「キャリア」とは、仕事だけでなく、家庭生活、地域社会、趣味、ボランティアなど個人の生活などを含めた、生き方そのものを対象としています。
アメリカの有名な教育学者である、D.E.スーパによると,キャリア=生涯過程を通して、「ある人に演じられる諸役割の組み合わせと連続」 と定義し、ライフキャリアレインボーというキャリア理論を提唱しました。
人には誕生から死まで一生涯にわたって果たすべき様々な役割が存在していること。
キャリア開発を、この役割と時間という2つの次元でとらえることを提唱しています。
「ライフキャリア」とは人生における役割であり、「ライフキャリアデザイン」とは、人生そのものの役割をプランニングするということです。
ではこのライフキャリアデザインは、いつ”デザイン”するのでしょうか
神戸大学の金井壽宏教授は、節目の時期にデザイン(設計)し、節目以外ではむしろドリフトし(流され)その適切なバランスの中でつくっていくべきだと説明しています。
節目とは当ブログ1回目でトランジションというお話をしましたがトランジション=節目ということになります。
では、節目とは人生上いつかということですが、金井教授は4つの契機を上げています。
1.危機:焦燥感や行き詰まりを感じるとき、病気や失業
2.メンターの声:先輩や上司、身内などの声
3.ゆとりや楽しみ:調子がいい時に自分を見直すことができる。企業が好調なときに経営改革するようなもの
4.カレンダー、年齢的なもの(入学、就職、定年等々)
実際、上の4つの契機に当てはまる節目は人生多々ありますが、その節目が人生における長期的な変局点かどうかというのは本人の受け止め方次第に関わってきます。
そして50代というのは、特に会社等に勤める者にとって定年を控え、会社を卒業した後に送る人生を
考える時期にあたります。
まさに自分の人生のライフキャリアを考える節目のひとつになるのではないでしょうか。
それでは以下ライフキャリアデザインの進め方:流れを見ていきましょう。
ライフデザインの流れは大まかに言って、3ステージとなります。
自分の過去を振り返りながら、自分の強み、弱み、自分の価値観や、パーソナリティを改めて認識します。
ツールとしては、ライフラインチャートを使いながら、自分の過去の経験から、自分の強み、弱み、価値観が何かというものを探っていきます。
下の図では、イベントとともに成功体験、失敗体験を記載していますが、強み、弱みを成功、失敗と結びつけて考えることにより、強み、弱みが本当に影響を与えているものなのか理解しながら認識することができます。
同時にライフイベントを通して、自分がどういう人の影響を受け、何に価値を見出してきたのかを発見するきっかけになります。
自己アセスメントの目的は、自分が何が得意で、何をしたいのか、何をやったときに一番価値を感じるのか、キャリア目標を設定するうえでの基盤となる自己イメージを発見するところにあります。
ライフラインシートが過去の自分から自己パーソナリティを浮かび出すのに対し、未来の自分から見て今の自分がどうあってほしいか、今の自分にどうアドバイスするか考えてみるのも、キャリアを決めるうえで有用な方法です。
実際、「80歳の自分からの手紙」という方法があり、80歳の自分が今の自分を見たらどういうアドバイスをするのか手紙風に書いてみるという手法があります。
特に人生の半分を過ぎた50代には、80歳の自分が遠い未来には見えないでしょう。自分の人生の意味や価値を考えることができるいい方法でないかと思います。
このステップでは、過去の職業経験や、教育・トレーニング経験をもとに、スキルの観点、自分のしたいこと、自分の価値観をもとにした、問題意識や課題を出しながら、キャリア目標設定をしていきます。
まさに「can,wants,must」の3つが満たされるキャリア目標を探すというステップ。
キャリアインベントリーシートを使い、今まで行ってきた職務、役職、会社、プロジェクトの内容、実績とともに、蓄積したスキル、経験等をまとめていきます。
過去の職務棚卸に対して、MUST(社会的に求められているサービスやもの)、WANTS(やりたい領域)を合わせて、キャリア目標を設定します。
キャリア目標ができたら、現状のスキルや環境、課題などを洗いだし、行動計画を作ることになります。
1年後、3年後、5年後、10年後等4フェーズで区切って行動計画つくることで、より大きく自分のキャリアを捉えることができると思います。
以上、ライフキャリアデザインについて説明してきました。
人生90歳以上まで生きるとなると、定年後、25年以上過ごしていく期間があります。
50代で自分のキャリアをデザインするというのは、しんどいことではあると思いますが、
人生を立ち止まって見直すいいチャンスでもあると思います。
ウイリアムブリッジズのいう「ニュートラルゾーン」であり、自己内省と人生設計のチャンスなのです。
自分は本来なにをしたいのか、何が好きなのか、50代すぎて、世の中の酸いも甘いもかみ分けられるからこそ、リアルに自分の人生を見直せられるのではないかと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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参考文献
キャリアデザインハンドブック ナカニシヤ出版
働くひとのためのキャリアデザイン 金井壽宏
前回のお話では、
・シニアの職業観が年齢が増えていくに従って、70歳以上も働きたい意識が強くなっていること。
・現状では、希望数どおりには働いていない。なんらかの選別が働きます。
というお話をしました。
今回は、そうした現状をもとに、シニアが長く働いていくためのポイントをお話します。
長い間会社で働いてきて、様々なスキルを皆習得してきているのは確かだ。
しかしながら、自分の所属する会社の考え方やルールでのスキル:その会社の中でしか通用しないスキルになっていないだろうか,またスキルがあったとしても、公にアピールできるものとなっているだろうか。
会社の中では、おおむね「スキル」で自分を説明するより、肩書・ポジションで説明したほうが、何する人かわかりやすい。
だから、転職してきている人は別として、自分の売れるスキルはこれ!って明確には出しにくいですよね。
競合企業の分析等でSWOT分析とかはしますけど、自分のスキルのSWOT分析や棚卸は、
やるタイミングがあまりありません。あくまでも達成度評価で棚卸までいきません。
今後、長く、働いていくためには、自分のスキルを見極め、スキルを「市場価値」に高めていく。
今のスキルを磨いたり、新し知識、能力をつけるような準備が必要になります。
例えば、トヨタなどでは、「トヨタを辞めても1000万プレーヤをめざせ」ということで、トヨタを出ても稼げる専門性をつけなさいと専門性教育を奨励しています。
前回ブログの「ライフシフト」でも、人生の3ステージ制(教育、会社、引退)は終わり、マルチステージ化して学びなおすステージが出現すると言っていました。
自分のスキルを市場価値へ高めるためには、
「一体自分の「強み」、「弱み」はなんなのか棚卸をする。自分を知っている回りの人に聞いてもいいでしょう。
その強みがわかったら、そのスキルが「市場価値」として通用するのか試してみる。
例えば休日副業しながら確かめてみるという方法が考えられる。
試しながら、自分のスキルを成長させていくそんなアクションが求められる。
自分の強みたるスキルを上手く伝えていくこと:それをうまくアピールすることだったり、「セルフブランディング」していく。
このアピール、日本人は苦手だ。
(私も、苦手で、面接やプレゼンで自己アピールが激しいのを見るとこの人の経歴はどこまで脚色かかっているのか勘ぐってしまうタイプです。)
会社の肩書や役職がない状況の中で、信頼を得ていく、差別化していくためには、こういうスキルだったら私ですよと、自己をブランディングしてく必要があります。
このネット社会でやはり見ず知らずの人と会ってなんらかのリレーションが発生する場合は、SNSを調べますよね。
SNSや、ブログはその人がどんな人か知るのにアクセスしやすい手段です。
パーソナルブランディングの第1歩は、SNS、ブログ、メルマガ等を通じて、自分の「テーマ」で発信していくこと。
(もちろんこのブログも私にとっては、その一環なのですが・・。)
SNSは、できれば個人用、ブランディング用を分けたほうがおすすめです。
自分のブランディングテーマと同じ流れに個人的な写真や自分の顔の写真ばかりだと人にとっては評価を下げる場合もありますからね。
今では、SNSを通して多くの人とつながれようになりました。
「ネットワーク」を築きやすくはなったが、重要なのは、自分が働くときに助けになってくれる人:仲間だ。
やはり多くの人とのネットワークを通して仕事を頂いたり、一緒にやったり、助言をもらったりして初めて仕事として成り立つ。
現在私のビジネスを支援してくれている友は、高校の同期だったり、元の会社の同期だったりしている。
以外にひょんなことからこのネットワークが生きてくる。
大きな会社にいると名刺交換は多くするけれども、長くお付き合いできるのはごく少数だ。会社を離れて個人になったとしてもおつきあいできるような人脈があれば、それは財産となる。そのためには、今まで培った培ったネットワークを磨いておく必要がある。
スキル、プロモーションが、関係構築ができる、その基礎となるのがこの人間力だ
人間力とは、Wikipediaから引用すれば、社会で生きてゆくために必要であったり、望ましい、総合的な力であり、
構成要素の例として下記6つを挙げておく。
・信頼を得る力
・真実を見つめる力
・逆境に向かう力
・物事を完遂する力
・成長を求める力
・自己を超越する力
「素」の自分となって、謙虚さをうしなわず、客観的に見なさい、努力しなさいってことだろう。
こういう「人間力」があって、信頼感を得て関係構築ができ、長く働いていけることとなる。
以上4つのポイントについて述べてみました。長く働くために必要な要素はいろいろな面から様々なポイントが出てくると思う。
重要なことは、自分のキャリア、特に終盤のキャリアは、会社まかせではなく、自分で計画、選択していかないといけないということだ。
そうした意味で、キャリアプランニングも(シニア世代になると)ライフキャリアという言葉になってきている。
人生いつまでもキャリアプランニングが必要なのだ。
次回はこのライフキャリアについて説明していきたい
参考文献
「リーダの人間力」ヘンリークラウド 日本能率協会マネジメント
「ワークシフト」リンダ・グラットン プレジデント
「Me2.0」ダン・ショーベル 日経BP社
「40歳からの会社に頼らない働き方」ちくま書店
本「ライフシフト」がベストセラーとなっている。
日本でもいくつか講演をしており、私も昨年の講演を聞く機会を得た。
リンダ・グラットンは、この前に「ワークシフト」という本で、テクノロジーの変化、グローバル化、長寿化が社会に変化をもたらし、
働き方も変わることを説いた。
「ライフシフト」は、そのうち長寿化に伴い、「働き方」どう変化していくのか説明している本だ。
本「ライフシフト」の副題は、「100年時代の人生戦略」だ。
研究によれば、2007年に生まれた日本の子供の50%が、107歳まで生きるようだ。
2007年で、107歳 2114年の話で2017年の私には関係ないと思ったら大間違い。まさに100年ライフはいま訪れようとしているのだ。
ちなみに、厚生労働省が発表している、平均寿命の2007年の値を見てみると、0歳児の平均余命は、男性79.19歳、女子85.99歳となっている。本で言っている107歳とは20歳以上の大きな差がある。
(ちなみに、今年の平均寿命が84歳にいうのは、あくまでその時の0歳児における平均余命を指す(らしい。))
この差は、平均年齢の計算方法が違い、この本は、コーホート平均年齢というものをもとに計算している。
・ピリオド平均年齢・・・・生まれたときの平均余命は変わらない前提で計算した平均寿命。通常言われる平均寿命がこれ(厚生労働省もこの平均寿命)
・コーホート平均年齢・・・進歩に従って、平均寿命が上がっていくことを考慮して、計算した平均寿命(ピリオド平均年齢は、各年齢ごとの現在の死亡率をもとに計算しているようで、コーホートは年齢を階層別にして、その時代の死亡率をもとに計算するようだ。)
***本の仮説が正しいか、厚生労働省の平均寿命と簡易平均余命表をもとに検証してみた
(あてはめ方としては乱暴だと思いますが・・・)*****
平均寿命=その年の0歳児の平均余命なので次の例を見てみよう。
例えば 1960年生まれの方 2015年(平成27年)55歳になった方をモデルとします。
1960年の平均寿命は、厚生労働省の数字を見ると、 男性 65.32歳、女性 70.19歳
2015年の55歳の方の平均余命は、厚生労働省の数字を見ると 男性 27.89年 女性 33.54歳となっている。
1960年平均寿命と2015年平均余命を見ると
男性 65.32歳→82.89歳(17.57年差)
女性 70.19歳→88.54歳(18.35年差)
(もちろん、これは0歳~55歳までの死亡率を無視するとということになるので、ちょっと乱暴でしょうが・・)
同じレベルで違いがあるとすると、2007年生まれで例えば55歳まで生きた方は、本の言うとおり、100歳を超えてくるということになる。
(もちろん、これも平成27年の値なので、現在55歳の人も、あと20年たてばまた余命数字が変わってくるだろう。)
また本では、平均寿命の延びというものがほぼ一直線で、減速ペースが見られないこと、この平均寿命は110歳~120歳ぐらいまで上昇しつづけ、その後伸びが減速するそうだ。
それでは、この本の仮説が正しいとして、2017年○○歳の人は一体何歳まで平均して生きられるのか逆算してみた。
前提:2007年生まれた子は平均107歳まで生きるとする。
年齢の伸びは、1年の平均3ヶ月伸びているとする。→4年で1歳(1年0.25歳)寿命が短くなる、長くなると計算
2017年での年齢 | 平均寿命 |
0歳 | 109.5 |
10歳 | 107 |
20歳 | 104.5 |
30歳 | 102 |
40歳 | 99.5 |
45歳 | 98.25 |
50歳 | 97 |
55歳 | 95.75 |
60歳 | 94.5 |
65歳 | 93.25 |
70歳 | 92 |
75歳 | 90.75 |
80歳 | 89.5 |
85歳 | 88.25 |
単純に計算すると、現状の85歳の人は、半数は88歳以上生きるということになる。
2017年 85歳~90歳の人口は501万人、 (ざっくり見て)85年前 1930年の0~4歳児の人口を調べると、901万人
(これまたザックリで)半分近くが85歳以上となっていると言える。
こう見てみると、100年ライフは、上の表からすると、まさにそこに来ているのだ・・・
(ちなみに、私は現在55歳で、85歳で人生設計していたので我ながらちょっと驚いている。さらに10年とは・・)
本では、健康寿命も伸びると書いている。
昨日の日本経済新聞においても、現在の高齢者においては 10~20 年前と 比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が 5~10 年遅延しており、「若返り」 現象がみられていること、現在75歳の歩行スピードが1992年の65歳の歩行スピードがほぼ同じという研究があることなどから、健康寿命が増えているのは確かだろう。
ただ新聞によれば個人差も大きいとのこと。
確かに昔に比べると健康に対する意識やかける時間も増えているが、気にしている人と気にしない人の差もあるように思う。年齢を重なるごとに健康差は大きくなっているのかも知れない。
さらに、重要なのは認知証だ。現在の厚生労働省の値では、認知症の人口比率は、65歳~69歳 1.5%、85歳以上 27% というのが現状となっている。本では、認知症は、現在研究中のテーマで20年後には期待できるのではないかと述べ、認知症問題も緩和されるとしている。
(平成28年版厚生労働白書)によると、1950年時点では65歳以上の高齢者1人を10人の現役世代で支えていたのが、2015年に は65歳以上の高齢者1人に対して現役世代2.1人へと急激に減少している。今後も支え手は減少し続け、2050(平成62)年には1.2人の現役世代で65歳以上の高齢者を支える見込みとなっている。 仮に20~69歳を現役世代人口、70歳以上を高齢世代人口として計算してみても、 2060年には高齢者1人に対する現役世代の人数は1.6人まで減少する見込みとある。これはもうどう考えても、制度として成り立たない状況になってくる。 受給年齢のさらなる引き上げ(現在の65歳から70歳への引上げ)、受給額の低下などの対応をせざるを得ない状況で、引退期間が長くなれば、お金が足りないという事実を突きつけられる。つまり、・・
今までの3ステージ型の人生(教育→労働→引退)から、マルチステージ化していく、
途中で学びなおしの期間が必要となり、余暇をリクリエーションではなく リ・クリエーション(再創生)として使うべきと説いている。
本書では、マルチステージの例として、下記のステージが生まれてくると紹介しています。
・エクスプローラ・・・(探検家)・・・1か所に腰を落ち着けるのはなく、身軽に動き続けるステージ
・インディペンデント プロデューサ→自分の仕事を生み出す人、旧知のキャリアから外れて自分のビジネスを始めるステージ
・ポートフォリオワーカ→週3日は会社、週1日はコミュニティで働くような一つの働きに集中するのではなく、並行的に活動していくステージ
もちろんこの3つのステージは、あくまでも例で、重要なのは、
・一律的な生き方でなくなるということ
・過去のモデルは通用しなくなり、人生のどこかに実験的なものが入ってくる
・そして、人それぞれの人生を選択できる時代ですよと説く。
長寿化は、時間の贈りもので目的意識をもって有意義な人生を形作るチャンスであり、変化を予期して行動することが大事と説いている。
そのために、例えば自分の今の人生を80歳、90歳から見つめたりして、人生計画と自己内省の必要性を説く。
私は何者か、私はどのように生きるべきかという問いに答えられるのは、本人しかいない。
重要なのは、主体的に選択することであり、どのような選択がどのような結果をもたらすか理解する必要があると結論づけている。
本書が言うように、変化を前にどのように生きていくのか、どう働いていくのかを決めるのは本人しかいない。
現状の制度では、会社は60歳(雇用延長で65歳)までが限度であり、会社はあなたを終身サポートしてくれるわけではない。
多くの人は60歳、65歳から自分で生きるすべを探さなくてはいけない。年齢としても、そこから探すとなると、どうしても今までスキル・キャリアを捨てざるをえない場合が増えてくるだろう。
そうしないためには、現在の自分の価値・スキルを市場価値化(会社以外で通用するスキル)する必要が出てくる。
100年時代の働き方として、私が提唱したいのは、会社にいるときから、暫時自分の価値を「市場価値化」していく実験を行っていく生き方だ。
そうすえば、定年への準備もできるし、現在雇用している企業も柔軟な雇用形態をむすぶこともできる。外部で自分の価値を試したり、自分のスキルアップも図れるし、自分の会社を外部から捉えることにより、現在の会社の改善点を見つけ出せることであろう。社会も本人のスキルを長くいかせ、労働力不足やスキルのアンマッチを和らげられることができる。
そんな社会を実現できればと思う。
ブレインソーシングコンセプト
参考文献
リンダ・グラットン アンドリュースコット著 東洋経済 「ライフシフト」
昭和戦後史 「男女別平均寿命」 http://shouwashi.com/transition-longevity.html
厚生労働省 「平均寿命早見表」 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
厚生労働省 「平成28年版厚生労働白書」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
日本経済新聞 平成29年2月19日版
博報堂の生活総合研究所では、「生活定点」という資料がオープンにされている。これは1992年から隔年ごとに1500項目にわたって調査し、定点観測を行いながら、意識の変化を見るデータとなっている。
(ここには、衣・食・住等 21種類のカテゴリのデータがまとめられているので、興味がある方は見てください。)
今回はこのデータをもとに、50代、60代の働くことに対しての意識と、長く働くためのポイントを2回にわたってお話しできればと思う。
この「生活定点」のデータより、まず「希望のリタイア年齢」を見てみよう。
対象世代 |
希望リタイア年齢 65~69歳と考える人 |
希望リタイア年齢 70歳以上と考える人 |
50歳代 | 39.3% | 27.9% |
60歳代 | 32.7% | 48.6% |
この調査だと60歳代の半分近くは、70歳以上も働きたいと考えているようだ。
そしてリタイアを後ろに伸ばしたい(長く働きたい)という数字は50歳代より60歳代のほうが大きく、年齢が上にいくほど、高くなっている。
しかも60歳代のリタイア70歳代の数字は前回調査から5.9%も増加しているのだ。
年をとると、さらに長く働きたいと思っているということだ。
さらに50歳代の労働観ってどんなものなのか、「生活定点」からとってみると、
・やりがいよりも安定性 26.2%
・やりたい仕事なら規模にかかわらない 57.3%
・同じ会社で仕事を続けたいと思う 52.8%
・今、自分の望む仕事についていると思う 36.1%
数字を見ると、規模や、安定性でこだわらず、自分のやりたい仕事をしたいと思っていながらも、できれば同じ会社で長く働きたい。
現状、自分の望む仕事についているわけではないが 大きな変化は望まないと、一見矛盾するような、すこし迷いのある状況であることが感じられる。
では現実の年齢ごとの就業率がどのくらいなのだろうか。
内閣府のデータ(平成24年版)をみると70歳~74歳の就業率は、22.8%、75歳以上では、8.3%となっている。
現状ではこの数字は増えていると思うが、それでも現実と希望では、20%程度差があることになる。これは改善されていくのか。
企業も年金支給年度の延長に伴って、雇用期間の延長をしてきた。
(定年年齢を60歳から65以上にあげた企業は、中小企業では16.9%、大企業では8.2%、大企業が継続雇用制度で対応している。)
企業にとっては、今までと同じ処遇、制度で延長というのは選択しづらい。若手に対してのポストはなくなるし、組織としての新陳代謝も
妨げられてしまう。コストも増える。そのため、「継続雇用制度」という新たな制度を設けて、対応しているということだろう。
(そう考えると定年そのものを延長した企業に比べ、「継続雇用制度」対応の企業というのは、60歳代以降を「消極的に」活用と考えていると捉えられるかと思う。大企業のほとんどが定年制度の延長をしていないということは、定年延長のもたらす影響が大きいということだろう。)
「継続雇用制度」の下では、新たな契約となるため、再雇用される際に、下記等の調整が入ってくる。
・給与の調整
・役割、ポジション調整
・時間の調整
・単年度契約の更新
特に、単年度での契約更新ということであれば、更新のタイミングで、役割と成果、給与等比較されるということから、なんらかの選別と時間や給与の調整が入ることとなる。(無論、制度的には企業は、希望すれば、65歳までは延長しないといけないことになってますが・・)
私も企業人事部門対象のシニア対応のセミナに出たことがあるが、大手企業の人事担当者から、定年後のシニアの再雇用について、残ってほしい人に残ってほしいといった話がきかれた。そう、全員に残ってほしいということではなくて、会社に貢献できる人にのみ企業は残ってもらいたいというのが本音といったところだろう。
これから超高齢化社会を迎えるにあたり、シニアのスキルを活かしていくことが重要になってくる。
シニアと雇用の課題は、雇用している企業側の問題だけではなく、我々自身の課題でもある。
現実を前に、定年を迎える50歳代は長く働くために、何をしていくべきなのか、会社の制度に「おんぶにだっこ」では済まない状況になってきているというのが事実だ。次のブログでは、長く働いていくための、ポイントを私なりに述べていきたいと思う。
参考文献・資料・データ
博報堂 生活総合研究所 生活定点
内閣府 高齢者白書(平成24年)
中高齢者雇用の現状と課題 nippon.com 今野浩一郎
定年年長.com
平成28年「高年齢者の雇用状況」集計結果
人生には多くの転機がある。進学、就職、結婚・離婚、子供の誕生、転職、定年、介護、死別等々様々な転機を迎えながら年齢を重ねていく。
もちろん、これ以外に例えば昇進だったり、大病等人それぞれの転機が加わっていくだろうし、「転機」のタイミングもひとそれぞれ異なると思う。
この転機をどう過ごし、どう対応していくかによって人生が決まってくると言っていいかもしれない
人生を長い線路で例えれば、転機は、線路の切り替え「ポイント」のようなものだ。
人生の中間地点を通り過ぎたミドル、シニアにとって、これからの「ポイント」にどう対応、選択していくのかがライフキャリアの最終章を作るうえで大事となる。
この「転機」に焦点をあてて、どう人生のキャリアを形成していくのか助けてくれる本がウイリアム・ブリッジズの「トランジション」だ。
トランジション=転機と捉えるとわかりやすいが、本の中では、変化=外的なもの、トランジション=変化に対応する内面的な心理的プロセス
と分け、どうこの内面的な心理プロセスを進めていくかについてアドバイスを与えてくれている。
今回は、ウイリアム・ブリッジズ「トランジション」をもとに転機をどう乗り越えライフキャリアを作っていくのかお話できればと思います。
本においては、「トランジション」には、次の3段階があるとしています。
第1段階:終わり(Endings)
第2段階:ニュートラルゾーン(Neutral Zone)
第3段階:新しい始まり(New Beginnings)
この「本」の重要なところは、「転機」が来た場合に、新しいことの始まりに行くのではなく、失うもの(終わり)や、自分を見つめなおす(ニュートラルゾーン)フェーズをいれているところだ。
また、第1~3段階も必ずしもこの順番で現れるわけでなく、転機を乗り越えていくために、3つのフェーズを認識していく必要があるいうことだろう。
下記に3つの段階について説明していきたい。
第1段階 終わりは、自分の立場や今までの役割、環境がなくなり、自分の古いアイデンティティがなくなっていく時期。
新しいことの始まりの際には、多かれ少なかれ、何かを失う(たとえそれがポジティブな転機でも)そのことの認識が必要だということだ。
例えば、今までの仲間、関係、役割、地位等が失われ、自分がアイデンティティ、ポジションがわからなくなる。
ブリッジズによれば、トランジションは、現在の人生のステージに当てはまらなくなっているものを手放すところから始まるものであるということ、
それを受け止めることが重要だと説いています。
特に人は、年齢を重ねるごとに、今まで「持っているもの」が自分の中で占める割合が大きくなり、「終わる」=「失う」ことによる
喪失感は大きくなってくるでしょう。そのために、「転機」に十分対処できなかったり、退避しようとします。
新しいことの始まりには、何等か失うものがあり、それを認識して、受け止めることが必要です。
今まで持ってきているものも、現在からみれば「絶対的、あたりまえ」のように思えますが、よくよく考えれば過去の「転機」を通して得たものであり、
「絶対的」なものではないと思います。自分自身の人生を考えたときにふさわしいと言えなくなっているものがなにかと捉える必要があるかと思います。
第2段階 ニュートラル段階で、古いものから去って、まだ新しいことが始まる前の状態。
まさに中間地点で、すぐトランジションを切り抜けようとするのではなく、自分の人生を見つめなおす時期と位置付けています。
まさに新しことが始まる前に過去の失ったものを認識しながらも、新しく始まる世界に対して気持ちを向けるタイミングと位置付けている。
ブリッジズはニュートラルゾーンを乗り越え自分を見つめる6つの方法を紹介している。
1.1人になれる特定の時間と場所を確保する・・・・自分の内なる声を聞く
2.ニュートラルゾーンの体験の記録を付ける・・・どんなことがあったのか、その時の気分はどうだったのか、何を考えていたのか、どんな決定をしたかったのか
3.自叙伝を書くために、ひと休みする・・・これまでどう生きたきたのかを理解することによってこれからどう生きていくか見えてくることがある
4.この機会に、本当にやりたいことを見いだす
5.もしいま死んだら、心残りは何かを考える
6.数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する・・・じっと閉じこもって、本来の自分を見つめる
キャリアプランにおいても「ライフラインチャート」を記載して、自分の過去を振り返り、自分の心情をもとに自分自身を見つめることがよく行われるが、
3~5は、自分自身を見つめなおす、わかりやすい手法だと思います。
こうしたプロセスを通して、自分が本当にやりたいことが何なのか認識を新たにすることが大事だと思う。
第3段階 新たな始まりは、新たな機会の発見という位置づけとなっている。新たにスタートさせる心の準備できていれば、始まりはヒントしてくると説いている。
このときの重要なことは、深い願いを理解すること、本当の自分自身になることのようだ。そうであれな、ひょんなところから新しいことが始まるということだと思う。
ブリッジズが言っていることは、転機を捉えて、現状の自分と、今後の自分、「ありたい」自分を自分自身のために、見つめ直しなさいということだと思う。
新たなことが始まる、始めるときには、「失うもの」も出てくるだろうし、自分が「どう」ありたいのか考えるタイミングだということ、そこを認識しながら、「ポイント」を
切り替えなさいということではないか。
仕事とトラジション
仕事は常にトランジションを多く求めるイベントである。入社から始まり、配属、異動、昇進、転職、定年等30年以上も長い期間のために多くの
トランジションがある。年齢を重ねた人にとってみれば、仕事の最終章をどう創造していくのかというのも、大きな「トランジション」だといえる。
もしあなたが仕事の最終章をどう創造していくのかという「トランジション」にあるならば、ブリッジズは下記3つの方向で考えることを進めている。
(1)あなたの職業がトランジションにあることを示唆しているものは何か・目下直面しているトランジションは何か、考えさせられることはなにか
(2)職業生活におけるこのトランジションの発達上の意味はなにか・自分の職業生活の最後の章をつけるとしたら
(3)自分が老人になったときのことを考えよう・90才になっていると想定して未来から現在の自分を振り返る。大きな変化を必要としている時期か、同じ方向であゆみつづけるべきか、90才の時点から振り返ってこの時期に取るべき方向にきづく
人生の半分を過ぎたミドル・シニアにとって、どう仕事の最終章を迎えるのか、非常に重要な「転機」だと思う。
例えば会社であれば、定年という「終わり」がある以上、今どんな「転機」をむかえるべきなのか、自分らしく生きていくためにどう選択していくのか
年齢を重ねれば、「転機」の回数は減ってくるでしょうが、確実に何回かの「転機」はやってくる。
その少ない「転機」を通して、過去からの振り返り、未来の自分からの振り返りを通して、自分自身を見つめなおす、年齢をかさねるからこそ、重要性もあるのではないか。
特に90才の自分から見て、現在の自分を振り返る、本当に示唆に富む手法かなと思う。
これから長寿化社会に向かっていくに従い、シニアの生き方、働き方や働くことに対しての意識も変わっていくと思う。
それこそ、「転機」を待ち受けるものとしてより、ありたい自分になるために、選択するものなのかもしれない。
私たちも、こうした「転機」を向かえたミドル・シニアの方々のライフプランニングを支援していきたいと願っております。
参考文献:ウイリアム・ブリッジズ「トランジション」人生の転機を活かすために パンローリング
:Willian Bridges Associates