シニアエンジニアの就労支援の中で、様々なシニアのエンジニアの方々とお会いするが、ときどき、「この方もっとアピールできるのにな。」と感ずることがある。
シニアの就労で重要なのは、面談でうまく自分のスキルや人柄を伝えられるかだ。成長性を売りにできる若者とは違い、シニアは過去での蓄積(経験、スキル、人柄)を売りにしているからだ。この「蓄積」を面談でうまく出せれば成功間違いなしだ。
ときどき事前面談していると、「大したことやってきていないので・・」とか「所詮 〇〇みたいな仕事なので、アピールするところなんて・・・」とか謙遜される方がいる。経歴書見ると、同じ技術を長くやられたり、同じ仕事で大手を渡り歩いていたりされている。
経歴書見て、そんなことないのではないかと思うのだが多くの方は、自分アピールはやっぱり苦手なのだ。
長い時間かけて選んだお土産を買っていっても”つまらないものですが”と言って手渡す”奥ゆかしさ”を身に着けた日本人にはそもそもやりにくいものなのかも知れない。でも、お土産渡すときの”常識”としてあるこの言葉も、”面談”となると使えない。
面談で”つまらない者ですが・・”と言って合格する人はまずいないだろう。人の”良さ”を示すこの奥ゆかしさは面談ではマイナスである。
若者とは違ってシニアは過去での蓄積(経験、スキル、人柄)を売りにしている。だからこそ、自分をわかってもらうための”努力”をしないといけない。
面談は、その人となりを知る手段の重要な手段のひとつ。自分自身のことを分かってもらう場であるのだ。
そのため、シニアの方には少し自分自身を紐解いてみることが必要だ。長い経験をしてきている以上、仕事上のいろんな事件があったはず。そのとき自分がどう感じ、考え、どうアクションしてきたのか、改めて見つめてみよう。
そのうえで自分の長所、短所がなんなのかを整理することがおすすめだ。自分の長所、短所、それを示すエピソードをまとめられるといいのではないかと思う。
「ライフラインチャート」や、「自己アセスメントシート」等を作成してみるがいいのではないか。
ただ、シニアは、人生長い分、過去の洗い出しは大変だ。20歳からのライフラインチャートを始めると、現在に近くになってくるとエネルギがつづかなくなる。まず自分の印象に残っている仕事やプロジェクトから洗い出してみよう。ない場合は、最近から作ってみるのも手だ。
そうは言っても、大したネタはでてこない。やっぱり洗い出ししても、「大した仕事はしてこなかったな」と感じたり「大した山、谷ないな・・」とか逆に認識して、煮詰まったりする。アピールポイント見つけるための作業が、無いことを再認識したりなんてことに。
でも、大丈夫。世の中のほとんどの仕事は、普通の仕事で成り立っているのだ。
誰しもやっている仕事が新聞に取り上げられたり、ニュースになって注目を浴びたいと思っているかもしれないが、そんなことはまれだ。スーパーマンなんてめったにいない。
だからと言ってアピールポイントがないということではない。いま必要なアピールポイントは、あなた自身を特徴ずけるアピールポイントなのだ。
あなたがして来た仕事の中には、かならずあなたを特徴ずけるアピールポイントが必ずあるはずである。
長く同じところで働いてこられた方、それには理由があるだろう。長く働いてこられた理由、顧客やメンバーとの信頼関係、仕事での経験の深さや対応力等あるのではないか。同じ業界で転職されてきた方は、まさに業務スキルを”買われた”のかも知れません。
人それぞれ、周りの人の”評価”があったからこそ、継続的に働いていられるのではないでしょうか。
こうしたアピールポイント、それを裏付けるエピソードや、経験が”誰しも”あるはずである。自分が今まで働てきたことにもっと自信を持ってもいいのではないかと思う。
自己アピールというと、大げさにとか、かっこよく、誇張してというイメージがあるかも知れません。でも、そんなことは必要ありません。誇張すれば、逆に”引かれてしまいます”。
面接する方は”プロ”ですので、誇張もわかれば、たとえ運よく”ばれなく”ても雇用関係を継続することは難しくなるでしょう。
必要なことは、控えめでもなく、誇張でもなく、”ちゃんと自分を説明する”ことです。
シニアの方によっては、面談を”黙っていても俺の能力はわかるだろう”と思っている方もいらっしゃいます。残念ながら、付き合って来た方ならともかく、初めての方には”わからない”のです。自分を”理解してもらう”姿勢も必要なのです。
自分自身を理解し、自分を”ちゃんと”説明することそれがシニアが自分の”蓄積”をもとに長く働ていけるひとつのコツだと思います。
生涯現役という言葉。見ない日はない。例えば「生涯現役」という言葉で検索すると
277万件出てくる。国、自治体、団体から企業、個人まで広く使われている言葉だ。
ただ、ご存じだろうか、この「生涯現役」という言葉。商標登録されている言葉だ。
特許情報プラットフォームJ-platpatで生涯現役を検索すると「生涯現役」で商標登録されている件数は10件(8社)。ぞれぞれ分野が異なっていて、教育事業から、金融商品、清涼飲料から、お菓子まで多岐にわたっている。
この中で一番古く登録している組織がライフベンチャー株式会社で1990年に登録となっている。
(このライフベンチャー株式会社は、私が所属している任意団体日本生涯現役協議会の関連組織である)
登録分類(対象製品)は、印刷物,書籍,雑誌,新聞等々で1997年に高齢化社会に対応し得る知識・能力の教授並びに地域社会に貢献できる人材に必要とされる知識・能力の教授という内容で登録し直されている。
最も新しい「生涯現役」の商標登録は、2014年12月 松崎製菓さん。もちろん分野はお菓子だ。
もちろん、「生涯現役」という言葉を商標登録するのには理由があったはずで、普通は、商標登録することにより、言葉をブランド化して差別化したいという意図があったのではないかと思う。
でも現実には、「生涯現役」という言葉、ものすごく多く使われている。例えば 生涯現役セミナで検索しても大量に検索結果が出てくる。皆普通の単語として「生涯現役」という言葉をつかっている。
それでは、例えば商標権の行使ってできるのか?
興味があったので商標・特許を扱う何名かの弁理士さんに聞いてみた。
「画一的な判断はできないのですが・・・と前置きしながら、弁理士さんは
商標登録されていても、必ずしも訴求できないものがあります。
例えば一般的に使われている単語になった場合のように普通名称化すると商標が登録されていても、
商標権の行使が不能となり、第三者による無断利用を排除することができない場合があること。
”生涯現役”という商標は、そういう対象になる可能性はあります。
また今まで、何もしていなくて、突然権利主張するのも難しいのではないか。」
とのお話をされていた。
閣議決定で「一億総活躍で生涯現役社会の実現」という言葉が出ている時代だ。誰でも使うのが普通になっている状況と捉えるべきだろう。
商標権を行使するということより、ここまで、商標登録した言葉が、一般用語にまでなったことを喜び、皆にどんどん使ってもらう。そこに価値を見出すことが重要なのかと感じた。
ここまで広まった「生涯現役」という言葉だが、そもそもこの言葉にはどんな”価値・力”があるのだろうか。
例えば皆さんは「生涯現役」という言葉にどんなイメージを抱くだろうか。
実は先日、複数の方から、たまたま「生涯現役」という言葉について、同じ内容の質問を受けてしまった。
「生涯現役ってやはり”働くこと”に限定されているんですよね」
もちろん、生涯現役という言葉、使われる場面で様々な意味で使われていると思うのだが、働くことだけ指しているわけではなく、もっと広く、生きがいをもちながら社会とかかわっていくこと、だから趣味でもいいし、地域での役割でも
いいし、必ずしも生涯現役=”働く”ということではないはずなのだ。
でも、最初に来る「生涯現役」から来るイメージは「働かなくちゃ」というところに来る。
(正直、私も長く働いていける社会を創る活動をしている手前、生涯現役と働くを結び付けて発言したり、書いたりすることが多いのだが・・・)
生涯現役という単語、概念そのものは、明るい未来を切り開こうという感じなのに漢字4文字の構造と相まって、重ーい単語のイメージをかもしだしている。
いやいや「生涯現役」って働くことだけじゃないですよっていくら力説したいところだが
先ほどの弁理士さん曰く、
言葉の持つブランド価値・ブランドイメージは、創った本人ではなく、受け取る相手が決めるもので
その言葉にどんなブランド価値を相手の方がもつのか、それをイメージしないと単語そのものに価値を持たせようと
しても意味ありませんよってな話も同時にされていた。なるほど。
確かに、中身は似ている”管理栄養士”と”野菜ソムリエ”。コンテンツ的には似通っていても、言葉のもつ受け取るイメージは大分違うのと似ている。
ライフキャリアプランニングという言葉も、人生の計画という意味だが、どうしても働くという意味がメインにでてしまうのと似ている。
一般用語した「生涯現役」という言葉がもっと一般的となって”ずっとアクティブに”ぐらいなイメージになるともうすこし明るく力のある言葉になるのではないかと思うがどうだろうか。
私が参加している「NPO法人生涯現役推進協議会」には、「生涯現役プロデューサ養成講座」というのがある。
自分も生涯現役をしながら、人の生涯現役を助ける人:これをプロデューサと呼び、これを養成するための講座なのだが、ここでは毎回宿題が出てくる。
先日の宿題で、生涯現役という言葉を使わず、ユーモアを意識して生涯現役を伝えるコラムを書く というお題が出た。
本来文章で提出なのだが、どうも”ユーモア・ユーモア”と考えている間に、なぜか宮沢賢治の”あの詩”が頭に・・・・・
これ使えないかと、これもとに”生涯現役”風にアレンジしてみた。
老いにもまけず
老いにもまけず
しらがにもまけず
肉体の衰えにもまけない
健康な心をもち、
決して怒らず、
いつも静かに、ときには大いにわらっている。
よく運動をし、健康にも気をくばり
常にバランスのとれた食生活をおくる。
自分の人生の目標をもち、
自分の強みを理解し、
学ぶことを常にわすれず
大いに本を読み、
若い人の声を聞き、
同じ仲間の苦労にも耳を貸す。
東に集まりあれば、喜んで参加し、
西に困っている若者がいれば、希望を与え、
北に不安に思っている同輩がいれば、手をさずけ、
南に迷っている人がいれば、一緒に悩み、道をさがす。
自らに苦しみごとあれば、
ひとりでふさがず、
他人のせいにもせず、
友に相談し、
前を向いて進んでいく。
ときには自分の人生をみつめ
自分の生きがいをもとめ、
明日への希望とする
世の中にぶらさがらず、
世の中の課題を理解して、
少しでも役にたち、
ひとからは喜ばれ、
でも、多くはもとめず、
年齢を重ねても、けっしてふけこまず、
周りとかかわりをもちながら
自分の生きがいを感じていく。
そういうものに
わたしはなりたい
宮沢賢治は、子供のころ好きで、全集買ってもらって読んだこともあり、
まねてみようかと思ったんだけど、
もともとの詩の最後の部分はこうなっている。
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
見返りを全く求めない愛。
あらためて読み直して、こんな崇高な気持ちにはとてもと思いながら作ってみた。
宮沢賢治の年齢はとうに超えているが、人間いつまでも煩悩は消えないものだ。
ちなみに、私は「生涯現役プロデューサ養成講座」を受けているが、自分自分をプロデュース中である。
人に対する見返りを求めない愛:それができるのはいつのことか。
私が、現在参加している「日本生涯現役推進協議会」には様々な「生涯現役」を実現されている方がいる。
童謡の作詞作曲家をされている高橋郁郎さんもその一人だ。
「童謡100年」という会の理事をされていて、様々なところで「詩の会」を開催されている。
「生涯現役実現できました!」と語られる御方だ。いつもにこやかに微笑んでいて、横に座ると
20歳以上も違う私にやさしく話かけてくれる。
なんと、この方、元国鉄職員で、国鉄が解体されたときに退職して、今まで自分の好きだった童謡の作詞作曲の道を選んだ。
国鉄職員時代にもPR音頭を作っていたようだが、すべて独学で学びながら、自分の好きなことを次の仕事として選んだとのこと。
好きなことを仕事に選ぶ。当たり前のことだけど、その勇気ある選択に脱帽!
その高橋さんが作られた「生涯現役音頭]。残念ながら、Youtubeには上がっていないので、どんな節なのか
不明だが、「生涯現役」をユーモアたっぷりに表現しているので。ちょっと読んでみるべし。
生涯現役音頭
高橋育郎作詞
高橋丈也作曲
勝 一雄 編曲(キーボード)
人生五十は むかしのことよ
いまじゃ百歳 長生き時代
伸びた生命は めでたいが(ソレ)
伸びた蕎麦では まずくて食えぬ
背筋ピンとして 腰を入れ
夢をひろげて 生きてゆこう
ソレ シャシャンと シャシャンと
シャシャンとな
余生隠居は むかしのことよ
いまじゃ生涯 現役時代
人生いつでも 青春だ(ソレ)
健康第一 心が二番
経済家庭に 交流と
もう一つ大事な 好奇心
ソレ シャシャンと シャシャンと
シャシャンとな
道はそれぞれ ちがっていても
集う仲間が 肩組みながら
生きがいづくりを 語り合う(ソレ)
歩いてゆこうよ 両手を振って
実践する道 光る道
しあわせ築こう 花咲かそう
ソレ シャシャンと シャシャンと
シャシャンとな
平成5年4月(平成15年 八十を百歳にする)
なんたって 伸びた蕎麦では まずくて食えぬ が秀逸だし、平成15年に歌詞八十を百歳にしている。もうすでに14年も前から人生100歳だったんだ!ってびっくり。
お楽しみいただけましたでしょうか。