働き方改革が、結局残業時間MAX100時間認める認めないにすり替わっているようだ。(yahooニュースより)
これでは、今までと何が変わるのか、これは改革と呼べるのでしょうか?
だいたい、こういうお題目は、最初は崇高な理想や目標を掲げるんだけど、進めて行くに従い、矮小化されたり、目的と手段が変わってしまう、あげくのはてには忘れ去られるということがよくあるので、そもそもの「働き方改革」の目的とは何だったのか思い出して見ます。
働き方改革は、「一億総活躍プラン」の中で立ち上げられた政策で首相官邸のHPには下記のように
記載されています。
“一億総活躍プランとは、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、
「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の
「新・三本の矢」を実現するための取り組みプラン”。
働き方改革は、「一応活躍プラン」の実現に向けて横断的な課題として位置付けられているのです。
多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換しなければならない。そのための実現ポイントは
(1)同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善
(2)長時間労働の是正
(3)高齢者の就労促進
となっています。
少子高齢化を迎えた日本が経済成長を持続させていくためのプランでそのために「働き方改革」という
制度変更をしていかないという話の流れです。
(2)の長時間労働については、
“長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、
女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている”
”長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、
ひいては生産性の向上につながる。”と述べています。
ちょっと単純図式化すると(粗くてすいませんが)
少子高齢化による経済縮小化を防ぐ→働き手(活躍する人)の人口増と出生率の向上を図る。→仕事と子育てが両立可能なライフスタイルへ→長時間労働の是正という流れになるのかと思います。
(働き方改革の目的は生産性向上かと思いましたが、改革の結果・効果と位置付けられているようです。)
現状の労基法上は、週40H勤務で、皆さんご存知のとおり、36協定を結べば、残業時間の延長をすることができます。
とは言っても36協定でも残業時間の制限はあり、週15時間、週45時間、年間360時間までとなっています。
但し、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない事情が発生すると予想される場合に特別条項付き36協定を結ぶことができ、さらに上限を超えることができるということになります。
(私の昔いた会社は上限360時間は超えていたので特別条項付き36協定だったことを今理解。)
今回政府が決着させようとしている月60時間、特別な場合は月100時間という数字を36協定の上限決めただけ
ということになってしまっています。この数字であれば、ほとんどの企業は、順守できるのではないかと思います。
長時間労働是正の目的は、女性の活躍進出を後押しする、夫婦で家庭を分担することにより、少子化にもはどめをかけるということですから、今回の内容では、後押しする政策に全くなっていませんし、政策的にも経済的にも全くインパクトを感じません。
少子高齢化が進む中、女性や高齢者含めて、経済成長に参画し、その経済成長享受していくことが、
日本の将来のひとつの方策でしょう。そのためには、雇用形態の多様性が必要だと思います。
(もちろん雇用の多様性ですべて解決できるわけでもなく、待機児童の解消の問題もあるでしょうが)
その多様性を阻むハードルを下げるために、長時間労働の是正というテーマがあったのに、非常に残念な結果です。
この制度は雇用の多様性の担保となる重要な政策です。
現状日本では、正社員と非正社員の給与の差は、100対65、ヨーロッパでは75~82程度、アメリカはなんと30(正社員の3分の1しかもらえていません)となっています。
この比率が狭まれば、正規、非正規の区別は要らなくなるかもしれません。
仕事の選択としてもそれこそ多様な形態で働くことが可能になるでしょう。
もちろん年齢も関係なくなるので、現状働いている人にとっては影響が大きいのも事実です。
(EUでは、雇用差別の禁止として、男女や雇用形態含めた同一(価値)労働同一賃金が定められているようです。)
同一労働同一賃金は実現にさらにハードルが高いとなると、どう紆余曲折していくのか、プラン上には「などによる実現」と記載しているし、今後どう進んでいくのか注目していきたい。
同一労働・同一賃金や、長時間労働の是正は、多様な雇用形態を実現していくためのベースとなる施策。
是非長期政権だからこそ、今後10年、20年の日本の成長力を担保できるような政策を検討・実現してほしいと思います。
参考文献
首相官邸HP 「一億総活躍プラン」
独立行政法人経済産業研究所 パート賃金格差 何が問題か
国立国会図書館 欧州に見る同一労働同一賃金