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定年延長制度 === 終身雇用の復活か?

定年延長制度 === 終身雇用の復活か?

1.定年延長企業が増えている

定年を今までの65歳から70歳にあげる企業が増えてきている。
ニュースとしても明治安田生命やニトリ等いくつかの企業で変えていくらしい。
https://www.rodo.co.jp/news/179835/
これは「改正高年齢者雇用安定法」施行で70歳までの雇用を企業の努力義務
としたことへの対応で、現在70歳までの継続雇用制度を設けている企業は、
大手で3割弱、中小で2割ほどになっている。(参照 図表1)

定年を上げたり、シニア雇用を継続していく流れは「人生100年時代」・
少子高齢化社会の中で就業人口を確保するためにも、いい効果をもたらすのだと思う。
今後多くの企業が70歳までの就業機会を広げていくと、文字通り「終身」雇用が
実質復活してきているのではないかという気さえしてくる。

2.定年延長 === 終身雇用の復活?

しかしながら数年前、ある企業トップは
「今の日本をみていると、雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と
終身雇用制度は難しいと言っていました。この企業トップが言うと影響力大きいなと当時感じました。
経済団体の代表も呼応して
「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」
と言っていました。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/051400346/

またいくつかの大企業ではリストラを大々的にしてきた時期もあります。
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198893_1527.html
数年前まで、終身雇用は難しいと言っていた企業群が、今は、シニアの雇用確保に動いている。
労働人口減少という長期的なトレンドは過去から変わらないのに、なぜ数年たつとトレンド?が
逆になっていくのでしょうか。そしてこのトレンドは未来永劫続いていくのでしょうか

3.今企業収益は好調

終身雇用が難しいう発言や、大手企業でのリストラが起きていたのは、
2018年~2020年という時期でした。
図表2に、企業収益の推移及び大手企業の希望退職者数の推移を載せています。
2018年からの3年間は、リーマンショック(2009年)から次第に立ち直って来た
企業収益がガクッと落ちた時期です。
消費増税(2019年)、米中貿易戦争(2018年~)、コロナ(2020年)等経済の先行き
が不安な時期に、経営者からの「終身雇用」に関する否定的な発言や、
希望退職をはじめとしたリストラが行われたと言えると思います。

でも2021年からの3年間、コロナも収束、円安効果もあり、
企業収益は上がり続け好調な状態にあります。
そのため企業は今、積極的な賃上げや、雇用機会の創出に力を入れ、
いい人材をとろうとしています。

4.社会保障は長期トレンドで苦しい

国は、
・「高年齢者雇用安定法」改正(2013年)で65歳までの定年延長を企業に義務付け、
・「改正高年齢者雇用安定法」施行(2021年)にて70歳までの就業機会の確保を
「努力義務」としてきました。
国は就業人口が減ってくる中で、なんとか年金制度や医療費の負担を軽減し、
社会の持続可能性を確保していくため、高齢者が生涯現役で働き続けられる環境を整備したいと
一環して考えているように思います。

国の施策の中で、経済状況の好況も相まって、今は、定年延長企業が増えたり、
70歳まで働ける環境を整備している環境を作る企業が増えてきているのではないでしょうか。

5.定年延長 !== 終身雇用

70歳まで働ける環境を作る企業は今後もどんどん増えていくのでしょうか?
少子高齢化のトレンドは変わらないので、今後もこの流れは変わらないと思います。

しかしながら、この「定年延長」の流れは必ずしも「終身雇用」の復活とはならないと思われます。
そもそも終身雇用とは、その会社に就職したら、会社が経営悪化しない限り、退職勧奨を受けない、
定年まで勤められる状況のことですが、

雇用継続制度の運用は企業によって異なってきます。
例えば、すべての社員を一律に雇用延長するのではなく、
個々の従業員のスキルやパフォーマンスに基づき選別するような条件がある場合が多いですし(図表3)、
再雇用後の待遇は個別に決められるケースもあり、継続雇用の実質は企業により変動があります。

定年延長・雇用継続する制度を持つ企業が増えるというのは高齢者にとって、
いい状況に変わってきているとは言えます。
但し運用は企業の考えや、経済状況によって変わる可能性もあります。
事実2024年度の上場企業の早期・希望退職者数は、23年度の倍に増加しています。
ですから定年延長の流れは決して制度としての「終身雇用」の復活ではありません。

企業の選別に値し、や再訓練に前向きな人が、再雇用可能性が高いということでもあり、
いくつになっても、競争力、コンピテンシーを磨いていくことが求められている、
制度的には機会が増えても、そこは変わらないと言えるでしょう。

参考
図表1: 図表3:労政時報 第4073号(2024年3月8日号)
WEBアンケート:労政時報定期購読者より回答の
あった277社を対象

図表2:法人企業統計調査(e-stat)より抽出
対象は資本金~5億迄確率統計抽出5億以上の企業:全数抽出
なお、金融業、保険業は対象外

上場企業「早期・希望退職状況」東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198893_1527.html
希望・早期退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計

fwba0287@nifty.com