本「ライフシフト」がベストセラーとなっている。
日本でもいくつか講演をしており、私も昨年の講演を聞く機会を得た。
リンダ・グラットンは、この前に「ワークシフト」という本で、テクノロジーの変化、グローバル化、長寿化が社会に変化をもたらし、
働き方も変わることを説いた。
「ライフシフト」は、そのうち長寿化に伴い、「働き方」どう変化していくのか説明している本だ。
本「ライフシフト」の副題は、「100年時代の人生戦略」だ。
研究によれば、2007年に生まれた日本の子供の50%が、107歳まで生きるようだ。
2007年で、107歳 2114年の話で2017年の私には関係ないと思ったら大間違い。まさに100年ライフはいま訪れようとしているのだ。
ちなみに、厚生労働省が発表している、平均寿命の2007年の値を見てみると、0歳児の平均余命は、男性79.19歳、女子85.99歳となっている。本で言っている107歳とは20歳以上の大きな差がある。
(ちなみに、今年の平均寿命が84歳にいうのは、あくまでその時の0歳児における平均余命を指す(らしい。))
この差は、平均年齢の計算方法が違い、この本は、コーホート平均年齢というものをもとに計算している。
・ピリオド平均年齢・・・・生まれたときの平均余命は変わらない前提で計算した平均寿命。通常言われる平均寿命がこれ(厚生労働省もこの平均寿命)
・コーホート平均年齢・・・進歩に従って、平均寿命が上がっていくことを考慮して、計算した平均寿命(ピリオド平均年齢は、各年齢ごとの現在の死亡率をもとに計算しているようで、コーホートは年齢を階層別にして、その時代の死亡率をもとに計算するようだ。)
***本の仮説が正しいか、厚生労働省の平均寿命と簡易平均余命表をもとに検証してみた
(あてはめ方としては乱暴だと思いますが・・・)*****
平均寿命=その年の0歳児の平均余命なので次の例を見てみよう。
例えば 1960年生まれの方 2015年(平成27年)55歳になった方をモデルとします。
1960年の平均寿命は、厚生労働省の数字を見ると、 男性 65.32歳、女性 70.19歳
2015年の55歳の方の平均余命は、厚生労働省の数字を見ると 男性 27.89年 女性 33.54歳となっている。
1960年平均寿命と2015年平均余命を見ると
男性 65.32歳→82.89歳(17.57年差)
女性 70.19歳→88.54歳(18.35年差)
(もちろん、これは0歳~55歳までの死亡率を無視するとということになるので、ちょっと乱暴でしょうが・・)
同じレベルで違いがあるとすると、2007年生まれで例えば55歳まで生きた方は、本の言うとおり、100歳を超えてくるということになる。
(もちろん、これも平成27年の値なので、現在55歳の人も、あと20年たてばまた余命数字が変わってくるだろう。)
また本では、平均寿命の延びというものがほぼ一直線で、減速ペースが見られないこと、この平均寿命は110歳~120歳ぐらいまで上昇しつづけ、その後伸びが減速するそうだ。
それでは、この本の仮説が正しいとして、2017年○○歳の人は一体何歳まで平均して生きられるのか逆算してみた。
前提:2007年生まれた子は平均107歳まで生きるとする。
年齢の伸びは、1年の平均3ヶ月伸びているとする。→4年で1歳(1年0.25歳)寿命が短くなる、長くなると計算
2017年での年齢 | 平均寿命 |
0歳 | 109.5 |
10歳 | 107 |
20歳 | 104.5 |
30歳 | 102 |
40歳 | 99.5 |
45歳 | 98.25 |
50歳 | 97 |
55歳 | 95.75 |
60歳 | 94.5 |
65歳 | 93.25 |
70歳 | 92 |
75歳 | 90.75 |
80歳 | 89.5 |
85歳 | 88.25 |
単純に計算すると、現状の85歳の人は、半数は88歳以上生きるということになる。
2017年 85歳~90歳の人口は501万人、 (ざっくり見て)85年前 1930年の0~4歳児の人口を調べると、901万人
(これまたザックリで)半分近くが85歳以上となっていると言える。
こう見てみると、100年ライフは、上の表からすると、まさにそこに来ているのだ・・・
(ちなみに、私は現在55歳で、85歳で人生設計していたので我ながらちょっと驚いている。さらに10年とは・・)
本では、健康寿命も伸びると書いている。
昨日の日本経済新聞においても、現在の高齢者においては 10~20 年前と 比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が 5~10 年遅延しており、「若返り」 現象がみられていること、現在75歳の歩行スピードが1992年の65歳の歩行スピードがほぼ同じという研究があることなどから、健康寿命が増えているのは確かだろう。
ただ新聞によれば個人差も大きいとのこと。
確かに昔に比べると健康に対する意識やかける時間も増えているが、気にしている人と気にしない人の差もあるように思う。年齢を重なるごとに健康差は大きくなっているのかも知れない。
さらに、重要なのは認知証だ。現在の厚生労働省の値では、認知症の人口比率は、65歳~69歳 1.5%、85歳以上 27% というのが現状となっている。本では、認知症は、現在研究中のテーマで20年後には期待できるのではないかと述べ、認知症問題も緩和されるとしている。
(平成28年版厚生労働白書)によると、1950年時点では65歳以上の高齢者1人を10人の現役世代で支えていたのが、2015年に は65歳以上の高齢者1人に対して現役世代2.1人へと急激に減少している。今後も支え手は減少し続け、2050(平成62)年には1.2人の現役世代で65歳以上の高齢者を支える見込みとなっている。 仮に20~69歳を現役世代人口、70歳以上を高齢世代人口として計算してみても、 2060年には高齢者1人に対する現役世代の人数は1.6人まで減少する見込みとある。これはもうどう考えても、制度として成り立たない状況になってくる。 受給年齢のさらなる引き上げ(現在の65歳から70歳への引上げ)、受給額の低下などの対応をせざるを得ない状況で、引退期間が長くなれば、お金が足りないという事実を突きつけられる。つまり、・・
今までの3ステージ型の人生(教育→労働→引退)から、マルチステージ化していく、
途中で学びなおしの期間が必要となり、余暇をリクリエーションではなく リ・クリエーション(再創生)として使うべきと説いている。
本書では、マルチステージの例として、下記のステージが生まれてくると紹介しています。
・エクスプローラ・・・(探検家)・・・1か所に腰を落ち着けるのはなく、身軽に動き続けるステージ
・インディペンデント プロデューサ→自分の仕事を生み出す人、旧知のキャリアから外れて自分のビジネスを始めるステージ
・ポートフォリオワーカ→週3日は会社、週1日はコミュニティで働くような一つの働きに集中するのではなく、並行的に活動していくステージ
もちろんこの3つのステージは、あくまでも例で、重要なのは、
・一律的な生き方でなくなるということ
・過去のモデルは通用しなくなり、人生のどこかに実験的なものが入ってくる
・そして、人それぞれの人生を選択できる時代ですよと説く。
長寿化は、時間の贈りもので目的意識をもって有意義な人生を形作るチャンスであり、変化を予期して行動することが大事と説いている。
そのために、例えば自分の今の人生を80歳、90歳から見つめたりして、人生計画と自己内省の必要性を説く。
私は何者か、私はどのように生きるべきかという問いに答えられるのは、本人しかいない。
重要なのは、主体的に選択することであり、どのような選択がどのような結果をもたらすか理解する必要があると結論づけている。
本書が言うように、変化を前にどのように生きていくのか、どう働いていくのかを決めるのは本人しかいない。
現状の制度では、会社は60歳(雇用延長で65歳)までが限度であり、会社はあなたを終身サポートしてくれるわけではない。
多くの人は60歳、65歳から自分で生きるすべを探さなくてはいけない。年齢としても、そこから探すとなると、どうしても今までスキル・キャリアを捨てざるをえない場合が増えてくるだろう。
そうしないためには、現在の自分の価値・スキルを市場価値化(会社以外で通用するスキル)する必要が出てくる。
100年時代の働き方として、私が提唱したいのは、会社にいるときから、暫時自分の価値を「市場価値化」していく実験を行っていく生き方だ。
そうすえば、定年への準備もできるし、現在雇用している企業も柔軟な雇用形態をむすぶこともできる。外部で自分の価値を試したり、自分のスキルアップも図れるし、自分の会社を外部から捉えることにより、現在の会社の改善点を見つけ出せることであろう。社会も本人のスキルを長くいかせ、労働力不足やスキルのアンマッチを和らげられることができる。
そんな社会を実現できればと思う。
ブレインソーシングコンセプト
参考文献
リンダ・グラットン アンドリュースコット著 東洋経済 「ライフシフト」
昭和戦後史 「男女別平均寿命」 http://shouwashi.com/transition-longevity.html
厚生労働省 「平均寿命早見表」 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
厚生労働省 「平成28年版厚生労働白書」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
日本経済新聞 平成29年2月19日版