博報堂の生活総合研究所では、「生活定点」という資料がオープンにされている。これは1992年から隔年ごとに1500項目にわたって調査し、定点観測を行いながら、意識の変化を見るデータとなっている。
(ここには、衣・食・住等 21種類のカテゴリのデータがまとめられているので、興味がある方は見てください。)
今回はこのデータをもとに、50代、60代の働くことに対しての意識と、長く働くためのポイントを2回にわたってお話しできればと思う。
この「生活定点」のデータより、まず「希望のリタイア年齢」を見てみよう。
対象世代 |
希望リタイア年齢 65~69歳と考える人 |
希望リタイア年齢 70歳以上と考える人 |
50歳代 | 39.3% | 27.9% |
60歳代 | 32.7% | 48.6% |
この調査だと60歳代の半分近くは、70歳以上も働きたいと考えているようだ。
そしてリタイアを後ろに伸ばしたい(長く働きたい)という数字は50歳代より60歳代のほうが大きく、年齢が上にいくほど、高くなっている。
しかも60歳代のリタイア70歳代の数字は前回調査から5.9%も増加しているのだ。
年をとると、さらに長く働きたいと思っているということだ。
さらに50歳代の労働観ってどんなものなのか、「生活定点」からとってみると、
・やりがいよりも安定性 26.2%
・やりたい仕事なら規模にかかわらない 57.3%
・同じ会社で仕事を続けたいと思う 52.8%
・今、自分の望む仕事についていると思う 36.1%
数字を見ると、規模や、安定性でこだわらず、自分のやりたい仕事をしたいと思っていながらも、できれば同じ会社で長く働きたい。
現状、自分の望む仕事についているわけではないが 大きな変化は望まないと、一見矛盾するような、すこし迷いのある状況であることが感じられる。
では現実の年齢ごとの就業率がどのくらいなのだろうか。
内閣府のデータ(平成24年版)をみると70歳~74歳の就業率は、22.8%、75歳以上では、8.3%となっている。
現状ではこの数字は増えていると思うが、それでも現実と希望では、20%程度差があることになる。これは改善されていくのか。
企業も年金支給年度の延長に伴って、雇用期間の延長をしてきた。
(定年年齢を60歳から65以上にあげた企業は、中小企業では16.9%、大企業では8.2%、大企業が継続雇用制度で対応している。)
企業にとっては、今までと同じ処遇、制度で延長というのは選択しづらい。若手に対してのポストはなくなるし、組織としての新陳代謝も
妨げられてしまう。コストも増える。そのため、「継続雇用制度」という新たな制度を設けて、対応しているということだろう。
(そう考えると定年そのものを延長した企業に比べ、「継続雇用制度」対応の企業というのは、60歳代以降を「消極的に」活用と考えていると捉えられるかと思う。大企業のほとんどが定年制度の延長をしていないということは、定年延長のもたらす影響が大きいということだろう。)
「継続雇用制度」の下では、新たな契約となるため、再雇用される際に、下記等の調整が入ってくる。
・給与の調整
・役割、ポジション調整
・時間の調整
・単年度契約の更新
特に、単年度での契約更新ということであれば、更新のタイミングで、役割と成果、給与等比較されるということから、なんらかの選別と時間や給与の調整が入ることとなる。(無論、制度的には企業は、希望すれば、65歳までは延長しないといけないことになってますが・・)
私も企業人事部門対象のシニア対応のセミナに出たことがあるが、大手企業の人事担当者から、定年後のシニアの再雇用について、残ってほしい人に残ってほしいといった話がきかれた。そう、全員に残ってほしいということではなくて、会社に貢献できる人にのみ企業は残ってもらいたいというのが本音といったところだろう。
これから超高齢化社会を迎えるにあたり、シニアのスキルを活かしていくことが重要になってくる。
シニアと雇用の課題は、雇用している企業側の問題だけではなく、我々自身の課題でもある。
現実を前に、定年を迎える50歳代は長く働くために、何をしていくべきなのか、会社の制度に「おんぶにだっこ」では済まない状況になってきているというのが事実だ。次のブログでは、長く働いていくための、ポイントを私なりに述べていきたいと思う。
参考文献・資料・データ
博報堂 生活総合研究所 生活定点
内閣府 高齢者白書(平成24年)
中高齢者雇用の現状と課題 nippon.com 今野浩一郎
定年年長.com
平成28年「高年齢者の雇用状況」集計結果