IT業界では、人材不足が顕著である。そしてこの傾向は拡大している。
経済産業省のモデルでは、IT 投資の伸び率を最も手堅い年率1.0%と仮定した場合でも、2030 年には
41 万人のIT 人材が不足すると予測され、41 万人の不足は、現在のIT 人材の4 割を超える規模となる。
その対策として、シニアIT 人材や女性、外国籍人材等の多様なIT 人材の活用によるIT 人材の量的確保
に加え、技術イノベーションによる革新的な生産性の向上、人材流動性の確保等による解決策を説いている。
ところが、人材不足という状況において、こうした対策にある取り組みはまだまだだ。
ちなみに私の会社のミッションは、シニアのエンジニアの”経験知”を使いながら、システム開発の効率化や品質向上、活用推進をしていくことだ。シニアのエンジニアが自分のスキルを使いながら、長く働いていけるようにしたい。
最近営業で、様々のIT企業様に訪問すると、だいたい同じ会話になる。
「うちも案件が多くて、人材不足なんだけど、せいぜい行けて45歳ぐらいまでなんだよね」
「それって、プロジェクトのすべての職種でですか?」
「マネージャ、リーダから開発者まですべて」
最初はあまり気にならなかったが、ほぼすべての企業様で言われる。
こうしたIT企業様送られて来る求人紹介も40代までの年齢制限付きだ。
年齢制限が付く理由は、元請けのプロジェクトリーダが40代で、それより上のメンバはつけないでと
依頼されるのが理由らしい。
求人を選択する場合の優先度合いは、スキル、経験その次に年齢だが、スキル・経験があれば
年齢ハードル超えられるかというとそうもいかない。
必須条件のひとつだ。
もちろんこうした年齢制限は”公”には認められていない。
請負はもとより、派遣であっても、年齢を条件に入れたり(60歳以上の年齢制限はOK)、事前面談
したりは”公には”いけないことになっている。
こうした”非公式”な年齢制限は、もちろんエンジニアに限った話ではない。
広告業界でも、50歳超えたリーダは、広告会社から商売を取ってこれないそうだ。
やはり顧客リーダと同世代でないと商売取れないので、裏方に回らざるを得ないという話を聞いた。
自分自身が発注者だったときには、特に年齢制限をつけた記憶もないが、すべての企業様で、
横並びで年齢制限を付けているのを見ると、これも下請けならではの、いわゆる”忖度”なのかと
思ってしまう。
人材不足で、案件がこなせないという状況の中で、新たな活用が進まない状況で、少子高齢化が確実に
今後進んでいく中でも、社会として年齢不寛容社会が広がっているような感じがしてしまうのである。
もし45歳までが上限だとしたら全体従事者の中でどのくらいの割合の人でこなしていかないといけないのか。
厚生労働省が平成27年度国勢調査の情報通信事業者の従事者数から推定して算出してみる。
すると、~44歳までの従事者人口は、~64歳までの従事人口の62%。全体人口の6割しか前線に立てない。
なお、同じ数値を平成22年度調査を見ると人口の70%であった。5年で8%縮小している。
平成33年(2020年)になると、”使える”エンジニアの数は半分切ってしまう。
ここにIT人材白書 2017の日本と米国の情報処理・通信に携わる人材の年齢構成を算出している数値がある。
(日本:2010年、米国:2015年と比較年は違うが)
全就業人口割合 | 日本 | 米国 |
20~24歳 | 6.4% | 9.4% |
25~34歳 | 19.0% | 22.0% |
35~44歳 | 23.0% | 21.0% |
45~54歳 | 20.4% | 21.9% |
55~64歳 | 19.9% | 16.8% |
ほぼ全就業人口の年齢比はあまり変わらないが、情報通信産業就業人口では、
情報通信産業就業人口割合 | 日本 | 米国 |
20~24歳 | 6.4% | 5.5% |
25~34歳 | 35.5% | 26.4% |
35~44歳 | 34.5% | 28.8% |
45~54歳 | 18.3% | 23.1% |
55~64歳 | 4.8% | 13.3% |
米国と比較しても、45歳~の落ちこみ度が大きく、年齢構成に大きな偏りがあるのだ。
今後はAI、IOT、ビッグデータと新たな技術に取り組んでゆかないといけない。
こうした新たな技術こそ、若い人に取り組ませるべきではないだろうか。
すべてのプロジェクトが45歳程度を上限に設定して構成していたとすれば、無駄に非効率ではないか。
やはり、プロジェクトに求められている能力や、技能や”人間性(コミュニケーション能力)”で選択すべきで、
年齢で制限すべきではないと思う。少なくとも入口排除は止めるべきでは。
(おそらく、この”人間性、コミュニケーション力”というところで年齢制限がついているのではないかと思うが、そこは今後展開していきたい。)
そして、もうひとつ年齢制限と相まってIT業界での人材不足を起こしている原因があると考えている。
それを次回にお話ししたい。
参考資料
経済産業省 2016年 IT ベンチャー等によるイノベーション促進のための人材育成・確保モデル事業
厚生労働省 平成27年度国勢調査
独立行政法人 情報処理推進機構 IT人材白書2017