年齢が50代後半、60代のエンジニアで、同じ会社に長く勤めされている方は、
年齢に伴う給与や雇用制度の見直し、もしくは会社からの肩たたきの動きもあり、
会社にこのまま残るべきか、辞めて、転職もしくは、個人事業主として働いていくべきか、
大いに迷うはずだ。特に今まで会社を移動する、辞めるという行為をしたことのない方
にとっては重大決断なのである。
最近、大手SIerの社員の方が面談に来られた。
年齢は60代前半、社員として30年以上働き、現状再雇用で働いている。
プロジェクトは、大手顧客で汎用機システムの開発保守を担当、
同じ顧客を長年担当しており、現状の仕事に不満を持っている様子もない、
会社から肩たたきにあう状況にも現状ないようだ。
なんでこんな方がと思い、最後に現状給与を聞いてみて
初めて辞めたいと言っている原因が理解できた。
システム開発者としてはあまりにも低い時給だったからだ。
確かに、同じ仕事なのに、給与が年齢で突然低くなるという状況で、今のままでいいのか、
辞めるか迷っている方もいらっしゃると思う。
そこでどう考えるべきか、どう準備すべきなのか少し考えてみたい。
レガシィ系の案件でシステム開発を担ってきた、60才前半ぐらいのSEをイメージして考えてみる。
考えられる選択枝は一般的に下記の5つぐらいであろうか。
このうち、4,5は私がアドバイスをすることでもないので1-3までで考えたいと思う。
1.会社にこのまま残る
2.会社が契約している人材会社さんから、紹介をもらう
3.個人事業主として独立する
4.システムとは別の仕事をする(NPOとか)
5.仕事をしないで、自分の趣味を追求する
まずは、1-3までのメリット、デメリットを簡単にまとめてみた。
1.現状の会社に残る
メリット
・収入が安定している。現状の福利厚生もそのまま
・現状の人間関係やルールはそのまま
・使うスキルもそのまま、新たに学ぶ必要性は低い
デメリット
・給与は低いままで抑えられる
・長く残れるかは会社次第になる
・会社都合で人事異動もあり
2.会社が契約している人材会社さんに紹介をもらう
メリット
・会社のブランドに基づいて紹介されるので案件の質が確保される
・給与等の待遇が現状より高い可能性もある
・新たなことにチャレンジできる可能性もある
デメリット
・新しい環境や仕事に慣れるため労力と時間がかかる
・長くできるかどうかは、転職先の会社次第
・会社が契約している人材会社であれば会社に知られる事が前提
3.個人事業主として独立
メリット
・給与は高くなる可能性大
・自分の意にそぐわないプロジェクト参加は少ないし、途中で辞めることも可能
・新しい環境、文化で違ったやり方、価値観を学べる。
デメリット
・あなたのスキル・経験を知らない初見の顧客に売り込まないといけない
・長く続くかはプロジェクト次第、年齢が上がるに従い案件を探すのは難しくなる
・レガシィ系の案件は多くはないため、選択枝が少なくなってくる
個人事業主の方が、給与は多くもらえるが、長く働けるかは、参加したプロジェクトの状況=「運」によるところが大きい。
当社でも65才超えて長く同じプロジェクト働いているメンバもいるが、少数であり、
おおよそ1年弱でプロジェクト終了、次の案件と渡り歩く必要が出てくる。
その時の案件数や条件がマッチすればよいが、なければインターバルが出てくる。
システムエンジニアは、業界の中で需要が高いのは事実だが、レガシィ案件は減っていく傾向にあり、
条件も少しづつ厳しくなっている。
年齢が高ければ案件を新たに見つけていくのはより難しくなることを念頭においていかないといけない。会社にいるほどには、安定的に働けるわけではないことを念頭に置く必要がある。
会社に残るにも独立するにも、「運」にたよる部分が多いのがネックであるがではどう考えたらいいのか、考える観点としてはあなた自身の気持ちと周りのステークホルダーの状況である。
1.自分のキャリアプラン、ライフプラン
自分のライフプランとしてどう考えているのか、新たな場に出て、試したいと思っているのか
やりたいこと、こだわりたいことは何か。
仕事の質か、長さか、それとも興味か?、安定か?まず何を自分の中で重視するのか検討が必要だ。
次に考えるのは自分を取り巻くステークホルダーの存在である
2. ステークホルダーの状況
(1) 会社:自分を取り巻く状況はどうなのか?当面何の変化もなく、このまま続けられそうなのか、
肩たたきが周りで始まっていて、近い将来自分にもめぐってきそう状況なのか、会社の方針や考え方を見ていく必要がある。
(2) 家族:もし自分が転職なり、独立なりする際に、家族はどう思ってくれるのか?
自由に選択できるのか、とにかく安定的に居てほしいのか、より待遇がいいところがあれば選択してほしいのか、自分の考えとともに家族と会話することが必要だ。
(3) その他:そのほか、ローンが残っていて等仕事を続ける諸事情あればこれも検討に加えることが必要だ。
(4)自分のマーケットでの価値:長く同じ会社に勤めていると、自分が現在の市場価値としてどのくらいなのか、会社を辞めて独立する際のリスクはどのくらいか、なかなかわかりにくい。
これは人材派遣会社に登録して話を聞いてみるか同じ境遇の人に聞くぐらいしかない。30代、40代みたいにどこの会社もウエルカムという状況ではない年代なので、マーケットバリュとリスクを事前確認しておくことを是非お勧めしたい。
実はバリバリSEとして働けるのはせいぜい65才ぐらいまでではないだろうか。上手くいけて70才近くか
30年近く働いてきて、残り5年、10年足らず、自分の好きなように選択すれば!と言いたいところもあるが、年齢を重ねた分、ステークホルダーも多いので、上の4,5点を吟味しながら検討していくことが 後選択したことへの納得感を持つためにも必要かと思う
人生100年時代とは、いくつになっても「君たちはどう生きるか」問われている時代ともいえるのかも知れない。
今まで60代の方が転職なり、独立しようとする際にどういう風に考えるべきかという話を進めてきた。
でも多くの人はなるべく安定的に働けて、より待遇がよくなる方法がないかと思っているはず。
個人的に考えるそれに見合う方法は、
プロジェクトで一緒に働いた協力会社さんに転職できないか検討してみることだ。
一緒に働いている協力会社さんであれば、会社状況も雰囲気もわかるだろうし、
相手もこちらのスキル、人格をわかっているので、判断しやすいし、
より高い待遇で迎えられる可能性も高いだろう。
もちろん、本人が協力会社から来てほしいまで行かなくても、
来てもいいよと言われるぐらいの人物であることは前提ではあるが・・・
やはりリスクを下げるには、人脈を生かしたほうが良いと思う。
長く働いてきた会社を辞めるのかの判断をするには、やはり事前準備が必要だ。
最初就職するために準備をし何社も面談を受け、今の会社に入ったはずだ。
同じように新たに転職、独立を選択する際にも準備が欠かせない。
その中で、自分のマーケットバリューやレガシィ案件の状況等知りたい場合には、
是非弊社にお問合せ頂きたい。
当社は、ベテラン向けの案件を多く取り揃えており、特にレガシィ案件が多い。
今すぐ転職するわけでなくても、あなたの職歴表から、どんな選択が可能なのか
客観的にお話ができると考えている。是非ブレインソーシングに登録頂き、あなたの
職歴表をもとによりよい選択枝を探せればと思っている。
参考:一部BingAI(https://www.bing.com/ai)での回答をもとに記載をしています。
コロナも5類となり、日常生活が少しづつ戻ってきている。
少子高齢化がどんどん進んでいく中で、長期的にはシニアの就労への役割は高くなって
いいはずであるが、案件の年齢状況を見ると、なかなかそうなっていないようだ。
そこには、年齢が高い人に対するステレオタイプ的な見方(バイアス)があるようにも思う。
ネガティブバイアスであれば、生産性が低い、新しい環境への適応力が弱い、といった能力
に対しての面や、年上に指示は出しにくいといった心理的なバイアスもあるであろう。
能力の面で、年を取ると生産性が低いのかについて今回調べてみた。
年齢と能力(intelligence,ability)の研究は長い間行われてきており、
最もポピュラーな分析は知能を流動性知能と、結晶性知能に分けて分析するやり方である。
多くの知能検査もこうした理論やその派生理論に基づいて行われてきているようである。
(図1 流動性知能と結晶性知能、年齢による変化)
流動性知能とは、生まれつきの能力とも言われ、短期記憶に能力に依存し、脳の伝達速度に
由来する能力で、情報の処理スピード、直観力、法則を発見する能力、図形処理能力、
記憶力等が当てはまる。いわば、ハードウエアとしての脳の能力を示す。
こうした能力の一部、例えば数的処理能力は20歳前後にピークを迎えるらしい。
子供が暗算のスピードや、知識の量や蓄えるスピードをテレビなので見るといつも関心させられる。
但し、流動性知能の中でも知覚速度や空間認知といったの能力は、60才ぐらいまでは維持され
ゆっくり下がってくるとわかっている。
結晶性知能は、後天的で、長期記憶の能力に依存し、知識の獲得と技能・経験の習熟によって
成長しつづける能力で、言語能力、理解力、洞察力のような能力が当てはまるようである。
大手企業の会社の経営者も50代、60代が多いし、こうした方々が話しているのを見ると重みや、
深さを感じるのはそういうことであろう。
(図2 6つの能力の年齢による影響)
グラフを見ると、得意な仕事の分類、苦手な仕事の分類が見えてくる。
やはり、長い年月をかけて獲得された経験に関連した仕事遂行は得意だろうし、
言語理解能力も深まることから、言語化する仕事、言葉によって伝える仕事、
例えば、プロジェクト監査やプロジェクト支援、プロジェクト調整が向いているのかも知れない。
設計等も、過去の経験、知識が活かせ、経験的評価が活きる場面では向いているのだろう。
処理スピードについては、遅くなるので、速度を求められる仕事や、新しい分野の習得については
若い人とは同じ速度ではできないのかも知れない。
PCやスマホを打つスピードも、やはり若い人にはかなわないだろう。
ただ速度は遅いけれども、熟考しながら進めて行くことで、ミスや手戻りを減らしカバーできる仕事であればOKだ。
新しい分野の習得(例えば新しい言語の習得)についても、難しいというわけではなく、
若いころより時間がかかるというレベルだろう。
iPhoneのゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」を作った有名な若宮さんは、81才からプログラミングを学び始めたようであり、スピードを求められなければ、60代でも、30代、40代と変わらないか、経験や知見をもとにした仕事であれば、それ以上の能力を発揮できる可能性があるということが確認されているのだ。
こうした能力には個人差があり、かつ年齢が高くなるにつれ、ギャップも大きくなるようだ。
結晶性知能も、後天的な能力であるので、使われなければ、落ちてくる。流動性知能についても同様で個人差もあえば、訓練によって維持していくことも可能なようだ。図3は知能試験での年齢別の分布を示したものである。一般的知識に関しては平均はゆっくりと下がっているが、分布幅を見るとほぼ平行であり年齢差は顕著ではない。一方情報処理速度については、分布幅も顕著に右下がりではあるが、個人差があり、60才でも速い人であれば、40才の平均ぐらいの処理速度を備えている。
今回は年齢における能力差についてみてみた。スピードや量といったハードウエア的能力については、次第に落ちてくるも、仕事を遂行していくための能力については、年齢による影響は60代までは、影響はない、さらに延びていく能力もあることを見て来た。またそうした能力を維持、強化していくためには、能力を使っていくことが大事であることを述べた。
心理学者のシャイエ(図2の研究を行った学者)は、こうした能力を維持するためには下記の心得や環境が必要だと述べている。
・複雑で知的刺激が多い環境にあること
・柔軟な生き方をすること
・脳の情報処理の早さを維持すること
こうした環境、生き方を進めていくためには、’どう老年期を生きたいかの選択’によるところも大きいようにも思う。働くことの意味付けも若いころと異なるであろう。次回は、老齢期における仕事をすることの意味についても考えてみたい。
参考文献
:「知的機能の変化と適応」 東京大学ジェロントロジー研究会
:知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より引用
:知能のエイジングに関する研究の動向 日本老年社会科学会 西田 裕紀子
:高齢者心理学、北大路書房
:最新老年心理学 : 老年精神医学に求められる心理学とは ワールドプランニング
:発達心理学Ⅱ 東京大学出版会
:新・発達心理学ハンドブック = HANDBOOK OF DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY 福村出版
:Handbook of the psychology of aging Ninth edition (The handbooks of aging)