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年別アーカイブ 2017

シニアのライフプランニング

第1回 トランジション

人生には多くの転機がある。進学、就職、結婚・離婚、子供の誕生、転職、定年、介護、死別等々様々な転機を迎えながら年齢を重ねていく。
もちろん、これ以外に例えば昇進だったり、大病等人それぞれの転機が加わっていくだろうし、「転機」のタイミングもひとそれぞれ異なると思う。
この転機をどう過ごし、どう対応していくかによって人生が決まってくると言っていいかもしれない
人生を長い線路で例えれば、転機は、線路の切り替え「ポイント」のようなものだ。
人生の中間地点を通り過ぎたミドル、シニアにとって、これからの「ポイント」にどう対応、選択していくのかがライフキャリアの最終章を作るうえで大事となる。

この「転機」に焦点をあてて、どう人生のキャリアを形成していくのか助けてくれる本がウイリアム・ブリッジズの「トランジション」だ。
トランジション=転機と捉えるとわかりやすいが、本の中では、変化=外的なもの、トランジション=変化に対応する内面的な心理的プロセス
と分け、どうこの内面的な心理プロセスを進めていくかについてアドバイスを与えてくれている。

今回は、ウイリアム・ブリッジズ「トランジション」をもとに転機をどう乗り越えライフキャリアを作っていくのかお話できればと思います。

本においては、「トランジション」には、次の3段階があるとしています。
第1段階:終わり(Endings)
第2段階:ニュートラルゾーン(Neutral Zone)
第3段階:新しい始まり(New Beginnings)

この「本」の重要なところは、「転機」が来た場合に、新しいことの始まりに行くのではなく、失うもの(終わり)や、自分を見つめなおす(ニュートラルゾーン)フェーズをいれているところだ。
また、第1~3段階も必ずしもこの順番で現れるわけでなく、転機を乗り越えていくために、3つのフェーズを認識していく必要があるいうことだろう。

下記に3つの段階について説明していきたい。

第1段階 終わりは、自分の立場や今までの役割、環境がなくなり、自分の古いアイデンティティがなくなっていく時期。
新しいことの始まりの際には、多かれ少なかれ、何かを失う(たとえそれがポジティブな転機でも)そのことの認識が必要だということだ。

例えば、今までの仲間、関係、役割、地位等が失われ、自分がアイデンティティ、ポジションがわからなくなる。
ブリッジズによれば、トランジションは、現在の人生のステージに当てはまらなくなっているものを手放すところから始まるものであるということ、
それを受け止めることが重要だと説いています。

特に人は、年齢を重ねるごとに、今まで「持っているもの」が自分の中で占める割合が大きくなり、「終わる」=「失う」ことによる
喪失感は大きくなってくるでしょう。そのために、「転機」に十分対処できなかったり、退避しようとします。
新しいことの始まりには、何等か失うものがあり、それを認識して、受け止めることが必要です。
今まで持ってきているものも、現在からみれば「絶対的、あたりまえ」のように思えますが、よくよく考えれば過去の「転機」を通して得たものであり、
「絶対的」なものではないと思います。自分自身の人生を考えたときにふさわしいと言えなくなっているものがなにかと捉える必要があるかと思います。

第2段階 ニュートラル段階で、古いものから去って、まだ新しいことが始まる前の状態。
まさに中間地点で、すぐトランジションを切り抜けようとするのではなく、自分の人生を見つめなおす時期と位置付けています。
まさに新しことが始まる前に過去の失ったものを認識しながらも、新しく始まる世界に対して気持ちを向けるタイミングと位置付けている。

ブリッジズはニュートラルゾーンを乗り越え自分を見つめる6つの方法を紹介している。
1.1人になれる特定の時間と場所を確保する・・・・自分の内なる声を聞く
2.ニュートラルゾーンの体験の記録を付ける・・・どんなことがあったのか、その時の気分はどうだったのか、何を考えていたのか、どんな決定をしたかったのか
3.自叙伝を書くために、ひと休みする・・・これまでどう生きたきたのかを理解することによってこれからどう生きていくか見えてくることがある
4.この機会に、本当にやりたいことを見いだす
5.もしいま死んだら、心残りは何かを考える
6.数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する・・・じっと閉じこもって、本来の自分を見つめる

キャリアプランにおいても「ライフラインチャート」を記載して、自分の過去を振り返り、自分の心情をもとに自分自身を見つめることがよく行われるが、
3~5は、自分自身を見つめなおす、わかりやすい手法だと思います。
こうしたプロセスを通して、自分が本当にやりたいことが何なのか認識を新たにすることが大事だと思う。

第3段階 新たな始まりは、新たな機会の発見という位置づけとなっている。新たにスタートさせる心の準備できていれば、始まりはヒントしてくると説いている。
このときの重要なことは、深い願いを理解すること、本当の自分自身になることのようだ。そうであれな、ひょんなところから新しいことが始まるということだと思う。

ブリッジズが言っていることは、転機を捉えて、現状の自分と、今後の自分、「ありたい」自分を自分自身のために、見つめ直しなさいということだと思う。
新たなことが始まる、始めるときには、「失うもの」も出てくるだろうし、自分が「どう」ありたいのか考えるタイミングだということ、そこを認識しながら、「ポイント」を
切り替えなさいということではないか。

仕事とトラジション
仕事は常にトランジションを多く求めるイベントである。入社から始まり、配属、異動、昇進、転職、定年等30年以上も長い期間のために多くの
トランジションがある。年齢を重ねた人にとってみれば、仕事の最終章をどう創造していくのかというのも、大きな「トランジション」だといえる。

もしあなたが仕事の最終章をどう創造していくのかという「トランジション」にあるならば、ブリッジズは下記3つの方向で考えることを進めている。
(1)あなたの職業がトランジションにあることを示唆しているものは何か・目下直面しているトランジションは何か、考えさせられることはなにか
(2)職業生活におけるこのトランジションの発達上の意味はなにか・自分の職業生活の最後の章をつけるとしたら
(3)自分が老人になったときのことを考えよう・90才になっていると想定して未来から現在の自分を振り返る。大きな変化を必要としている時期か、同じ方向であゆみつづけるべきか、90才の時点から振り返ってこの時期に取るべき方向にきづく

人生の半分を過ぎたミドル・シニアにとって、どう仕事の最終章を迎えるのか、非常に重要な「転機」だと思う。
例えば会社であれば、定年という「終わり」がある以上、今どんな「転機」をむかえるべきなのか、自分らしく生きていくためにどう選択していくのか
年齢を重ねれば、「転機」の回数は減ってくるでしょうが、確実に何回かの「転機」はやってくる。
その少ない「転機」を通して、過去からの振り返り、未来の自分からの振り返りを通して、自分自身を見つめなおす、年齢をかさねるからこそ、重要性もあるのではないか。
特に90才の自分から見て、現在の自分を振り返る、本当に示唆に富む手法かなと思う。

これから長寿化社会に向かっていくに従い、シニアの生き方、働き方や働くことに対しての意識も変わっていくと思う。
それこそ、「転機」を待ち受けるものとしてより、ありたい自分になるために、選択するものなのかもしれない。

私たちも、こうした「転機」を向かえたミドル・シニアの方々のライフプランニングを支援していきたいと願っております。

参考文献:ウイリアム・ブリッジズ「トランジション」人生の転機を活かすために パンローリング
Willian Bridges Associates