先日、セミナーで、伝える力の講演を聞いた。
この年になって、話すこと、聞くことにあえて意識してくることはなかったので、
ちょっと話を聞いて、なるほどね、目からうろこと思い、今回はブログに。
野菜ソムリエ。現在では名前もメジャーになった。2002年に長谷川理恵が資格取得してその後も芸能人が次々取得。この資格とるのに、最低でも15万円ほどかかるのであるが、現在では、会員数は58000人を超える。
「野菜をもっととる」という”情報”の観点で言えば野菜ソムリエと管理栄養士は似たようなもんだろう。
しかし、「伝え方」の観点からは大分異なるようだ。
野菜ソムリエの講座の講座は、「ベジフルコミュニケーション」の講座で始まる。
知識ではなく、「コミュニケーション」から入るのだ。
管理栄養士が、「食べ過ぎですね、もっと野菜をとってください、もっと運動してください」等、情報の伝達を(どちらかというとネガティブな指導)をメインにおいているのに対して、野菜ソムリエは、感動を伝えることを重点に置いている。
先ほどのコミュニケーション講座も”野菜の魅力や感動を正しく説明できる力、立ち居振る舞いや、目線の動きなど理論的なコミュニケーションを習得する”ために行っているのだ。
制服も決まっており、白いシャツに黒のエプロン、赤いチーフとなっており、情報よりも、生き様、情熱、感動を伝える、まさに「伝え方」をかなり重視しているのだ。
野菜を食べる方としても、ビタミン要素で教えられるより、野菜のおいしさとか、みずみずしさとか”野菜をとる楽しさ”と一緒に伝えてもらったほうが、採りたい!と思いますね。
野菜ソムリエ制度の創立者は、有機農法の提携運動が社会的にいくら正しいことを訴えても広がらないのを見て、伝え方や、皆が一歩踏み出しやすい環境を作る方法を考えたそうです。
ついつい、情報や理論を伝えることに集中してしまう、精緻な理論は重要ですが、それだけでは、いいねはもらえても参画まではハードルが高いですよね。
これは2014年のNHKのクローズアップ現代で放送されたもので、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士の理論。
マーシャル・ガンツ博士は元は社会運動家で、オバマ前大統領の選挙参謀としても活躍、社会運動を広げていくために伝え方として「セルフ・アス・ナウ」という伝え方を提唱しています。
運動を広げるためには、人の心に火をつける物語が必要で、そのための3つの要素。
セルフ:自分の物語→なぜこの活動をしているのか
アス:私たちの物語→価値観を相手と共有する
ナウ:今の物語→なぜ今しないといけないのか
こうしたストーリをもとに、価値観を感情へと高め、行動(コミットメント)につなげなさいと述べています。
野菜ソムリエとセルフ・アス・ナウともに、伝え方の重要な要素は”感動を伝えられるか”という点。
改めて、「伝え方」というものを考えてみたいと思います。
参考文献
「野菜ソムリエという人を育てる仕事」 福井栄治 幻冬舎文庫
NHKクローズアップ現代 http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3448/1.html
働き方改革が、結局残業時間MAX100時間認める認めないにすり替わっているようだ。(yahooニュースより)
これでは、今までと何が変わるのか、これは改革と呼べるのでしょうか?
だいたい、こういうお題目は、最初は崇高な理想や目標を掲げるんだけど、進めて行くに従い、矮小化されたり、目的と手段が変わってしまう、あげくのはてには忘れ去られるということがよくあるので、そもそもの「働き方改革」の目的とは何だったのか思い出して見ます。
働き方改革は、「一億総活躍プラン」の中で立ち上げられた政策で首相官邸のHPには下記のように
記載されています。
“一億総活躍プランとは、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、
「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の
「新・三本の矢」を実現するための取り組みプラン”。
働き方改革は、「一応活躍プラン」の実現に向けて横断的な課題として位置付けられているのです。
多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換しなければならない。そのための実現ポイントは
(1)同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善
(2)長時間労働の是正
(3)高齢者の就労促進
となっています。
少子高齢化を迎えた日本が経済成長を持続させていくためのプランでそのために「働き方改革」という
制度変更をしていかないという話の流れです。
(2)の長時間労働については、
“長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、
女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている”
”長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、
ひいては生産性の向上につながる。”と述べています。
ちょっと単純図式化すると(粗くてすいませんが)
少子高齢化による経済縮小化を防ぐ→働き手(活躍する人)の人口増と出生率の向上を図る。→仕事と子育てが両立可能なライフスタイルへ→長時間労働の是正という流れになるのかと思います。
(働き方改革の目的は生産性向上かと思いましたが、改革の結果・効果と位置付けられているようです。)
現状の労基法上は、週40H勤務で、皆さんご存知のとおり、36協定を結べば、残業時間の延長をすることができます。
とは言っても36協定でも残業時間の制限はあり、週15時間、週45時間、年間360時間までとなっています。
但し、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない事情が発生すると予想される場合に特別条項付き36協定を結ぶことができ、さらに上限を超えることができるということになります。
(私の昔いた会社は上限360時間は超えていたので特別条項付き36協定だったことを今理解。)
今回政府が決着させようとしている月60時間、特別な場合は月100時間という数字を36協定の上限決めただけ
ということになってしまっています。この数字であれば、ほとんどの企業は、順守できるのではないかと思います。
長時間労働是正の目的は、女性の活躍進出を後押しする、夫婦で家庭を分担することにより、少子化にもはどめをかけるということですから、今回の内容では、後押しする政策に全くなっていませんし、政策的にも経済的にも全くインパクトを感じません。
少子高齢化が進む中、女性や高齢者含めて、経済成長に参画し、その経済成長享受していくことが、
日本の将来のひとつの方策でしょう。そのためには、雇用形態の多様性が必要だと思います。
(もちろん雇用の多様性ですべて解決できるわけでもなく、待機児童の解消の問題もあるでしょうが)
その多様性を阻むハードルを下げるために、長時間労働の是正というテーマがあったのに、非常に残念な結果です。
この制度は雇用の多様性の担保となる重要な政策です。
現状日本では、正社員と非正社員の給与の差は、100対65、ヨーロッパでは75~82程度、アメリカはなんと30(正社員の3分の1しかもらえていません)となっています。
この比率が狭まれば、正規、非正規の区別は要らなくなるかもしれません。
仕事の選択としてもそれこそ多様な形態で働くことが可能になるでしょう。
もちろん年齢も関係なくなるので、現状働いている人にとっては影響が大きいのも事実です。
(EUでは、雇用差別の禁止として、男女や雇用形態含めた同一(価値)労働同一賃金が定められているようです。)
同一労働同一賃金は実現にさらにハードルが高いとなると、どう紆余曲折していくのか、プラン上には「などによる実現」と記載しているし、今後どう進んでいくのか注目していきたい。
同一労働・同一賃金や、長時間労働の是正は、多様な雇用形態を実現していくためのベースとなる施策。
是非長期政権だからこそ、今後10年、20年の日本の成長力を担保できるような政策を検討・実現してほしいと思います。
参考文献
首相官邸HP 「一億総活躍プラン」
独立行政法人経済産業研究所 パート賃金格差 何が問題か
国立国会図書館 欧州に見る同一労働同一賃金
今回は、「ライフキャリアデザイン」についてお話します。
通常「キャリア」と聞くと、職歴だったり、役職だったり、はたまた転職といった「働くことに関連して」使われることがほとんどですが、「ライフキャリア」における「キャリア」とは、仕事だけでなく、家庭生活、地域社会、趣味、ボランティアなど個人の生活などを含めた、生き方そのものを対象としています。
アメリカの有名な教育学者である、D.E.スーパによると,キャリア=生涯過程を通して、「ある人に演じられる諸役割の組み合わせと連続」 と定義し、ライフキャリアレインボーというキャリア理論を提唱しました。
人には誕生から死まで一生涯にわたって果たすべき様々な役割が存在していること。
キャリア開発を、この役割と時間という2つの次元でとらえることを提唱しています。
「ライフキャリア」とは人生における役割であり、「ライフキャリアデザイン」とは、人生そのものの役割をプランニングするということです。
ではこのライフキャリアデザインは、いつ”デザイン”するのでしょうか
神戸大学の金井壽宏教授は、節目の時期にデザイン(設計)し、節目以外ではむしろドリフトし(流され)その適切なバランスの中でつくっていくべきだと説明しています。
節目とは当ブログ1回目でトランジションというお話をしましたがトランジション=節目ということになります。
では、節目とは人生上いつかということですが、金井教授は4つの契機を上げています。
1.危機:焦燥感や行き詰まりを感じるとき、病気や失業
2.メンターの声:先輩や上司、身内などの声
3.ゆとりや楽しみ:調子がいい時に自分を見直すことができる。企業が好調なときに経営改革するようなもの
4.カレンダー、年齢的なもの(入学、就職、定年等々)
実際、上の4つの契機に当てはまる節目は人生多々ありますが、その節目が人生における長期的な変局点かどうかというのは本人の受け止め方次第に関わってきます。
そして50代というのは、特に会社等に勤める者にとって定年を控え、会社を卒業した後に送る人生を
考える時期にあたります。
まさに自分の人生のライフキャリアを考える節目のひとつになるのではないでしょうか。
それでは以下ライフキャリアデザインの進め方:流れを見ていきましょう。
ライフデザインの流れは大まかに言って、3ステージとなります。
自分の過去を振り返りながら、自分の強み、弱み、自分の価値観や、パーソナリティを改めて認識します。
ツールとしては、ライフラインチャートを使いながら、自分の過去の経験から、自分の強み、弱み、価値観が何かというものを探っていきます。
下の図では、イベントとともに成功体験、失敗体験を記載していますが、強み、弱みを成功、失敗と結びつけて考えることにより、強み、弱みが本当に影響を与えているものなのか理解しながら認識することができます。
同時にライフイベントを通して、自分がどういう人の影響を受け、何に価値を見出してきたのかを発見するきっかけになります。
自己アセスメントの目的は、自分が何が得意で、何をしたいのか、何をやったときに一番価値を感じるのか、キャリア目標を設定するうえでの基盤となる自己イメージを発見するところにあります。
ライフラインシートが過去の自分から自己パーソナリティを浮かび出すのに対し、未来の自分から見て今の自分がどうあってほしいか、今の自分にどうアドバイスするか考えてみるのも、キャリアを決めるうえで有用な方法です。
実際、「80歳の自分からの手紙」という方法があり、80歳の自分が今の自分を見たらどういうアドバイスをするのか手紙風に書いてみるという手法があります。
特に人生の半分を過ぎた50代には、80歳の自分が遠い未来には見えないでしょう。自分の人生の意味や価値を考えることができるいい方法でないかと思います。
このステップでは、過去の職業経験や、教育・トレーニング経験をもとに、スキルの観点、自分のしたいこと、自分の価値観をもとにした、問題意識や課題を出しながら、キャリア目標設定をしていきます。
まさに「can,wants,must」の3つが満たされるキャリア目標を探すというステップ。
キャリアインベントリーシートを使い、今まで行ってきた職務、役職、会社、プロジェクトの内容、実績とともに、蓄積したスキル、経験等をまとめていきます。
過去の職務棚卸に対して、MUST(社会的に求められているサービスやもの)、WANTS(やりたい領域)を合わせて、キャリア目標を設定します。
キャリア目標ができたら、現状のスキルや環境、課題などを洗いだし、行動計画を作ることになります。
1年後、3年後、5年後、10年後等4フェーズで区切って行動計画つくることで、より大きく自分のキャリアを捉えることができると思います。
以上、ライフキャリアデザインについて説明してきました。
人生90歳以上まで生きるとなると、定年後、25年以上過ごしていく期間があります。
50代で自分のキャリアをデザインするというのは、しんどいことではあると思いますが、
人生を立ち止まって見直すいいチャンスでもあると思います。
ウイリアムブリッジズのいう「ニュートラルゾーン」であり、自己内省と人生設計のチャンスなのです。
自分は本来なにをしたいのか、何が好きなのか、50代すぎて、世の中の酸いも甘いもかみ分けられるからこそ、リアルに自分の人生を見直せられるのではないかと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ライフキャリアデザインセミナー受付中(参加費用無料 4月20日 19:00~)
参考文献
キャリアデザインハンドブック ナカニシヤ出版
働くひとのためのキャリアデザイン 金井壽宏
前回のお話では、
・シニアの職業観が年齢が増えていくに従って、70歳以上も働きたい意識が強くなっていること。
・現状では、希望数どおりには働いていない。なんらかの選別が働きます。
というお話をしました。
今回は、そうした現状をもとに、シニアが長く働いていくためのポイントをお話します。
長い間会社で働いてきて、様々なスキルを皆習得してきているのは確かだ。
しかしながら、自分の所属する会社の考え方やルールでのスキル:その会社の中でしか通用しないスキルになっていないだろうか,またスキルがあったとしても、公にアピールできるものとなっているだろうか。
会社の中では、おおむね「スキル」で自分を説明するより、肩書・ポジションで説明したほうが、何する人かわかりやすい。
だから、転職してきている人は別として、自分の売れるスキルはこれ!って明確には出しにくいですよね。
競合企業の分析等でSWOT分析とかはしますけど、自分のスキルのSWOT分析や棚卸は、
やるタイミングがあまりありません。あくまでも達成度評価で棚卸までいきません。
今後、長く、働いていくためには、自分のスキルを見極め、スキルを「市場価値」に高めていく。
今のスキルを磨いたり、新し知識、能力をつけるような準備が必要になります。
例えば、トヨタなどでは、「トヨタを辞めても1000万プレーヤをめざせ」ということで、トヨタを出ても稼げる専門性をつけなさいと専門性教育を奨励しています。
前回ブログの「ライフシフト」でも、人生の3ステージ制(教育、会社、引退)は終わり、マルチステージ化して学びなおすステージが出現すると言っていました。
自分のスキルを市場価値へ高めるためには、
「一体自分の「強み」、「弱み」はなんなのか棚卸をする。自分を知っている回りの人に聞いてもいいでしょう。
その強みがわかったら、そのスキルが「市場価値」として通用するのか試してみる。
例えば休日副業しながら確かめてみるという方法が考えられる。
試しながら、自分のスキルを成長させていくそんなアクションが求められる。
自分の強みたるスキルを上手く伝えていくこと:それをうまくアピールすることだったり、「セルフブランディング」していく。
このアピール、日本人は苦手だ。
(私も、苦手で、面接やプレゼンで自己アピールが激しいのを見るとこの人の経歴はどこまで脚色かかっているのか勘ぐってしまうタイプです。)
会社の肩書や役職がない状況の中で、信頼を得ていく、差別化していくためには、こういうスキルだったら私ですよと、自己をブランディングしてく必要があります。
このネット社会でやはり見ず知らずの人と会ってなんらかのリレーションが発生する場合は、SNSを調べますよね。
SNSや、ブログはその人がどんな人か知るのにアクセスしやすい手段です。
パーソナルブランディングの第1歩は、SNS、ブログ、メルマガ等を通じて、自分の「テーマ」で発信していくこと。
(もちろんこのブログも私にとっては、その一環なのですが・・。)
SNSは、できれば個人用、ブランディング用を分けたほうがおすすめです。
自分のブランディングテーマと同じ流れに個人的な写真や自分の顔の写真ばかりだと人にとっては評価を下げる場合もありますからね。
今では、SNSを通して多くの人とつながれようになりました。
「ネットワーク」を築きやすくはなったが、重要なのは、自分が働くときに助けになってくれる人:仲間だ。
やはり多くの人とのネットワークを通して仕事を頂いたり、一緒にやったり、助言をもらったりして初めて仕事として成り立つ。
現在私のビジネスを支援してくれている友は、高校の同期だったり、元の会社の同期だったりしている。
以外にひょんなことからこのネットワークが生きてくる。
大きな会社にいると名刺交換は多くするけれども、長くお付き合いできるのはごく少数だ。会社を離れて個人になったとしてもおつきあいできるような人脈があれば、それは財産となる。そのためには、今まで培った培ったネットワークを磨いておく必要がある。
スキル、プロモーションが、関係構築ができる、その基礎となるのがこの人間力だ
人間力とは、Wikipediaから引用すれば、社会で生きてゆくために必要であったり、望ましい、総合的な力であり、
構成要素の例として下記6つを挙げておく。
・信頼を得る力
・真実を見つめる力
・逆境に向かう力
・物事を完遂する力
・成長を求める力
・自己を超越する力
「素」の自分となって、謙虚さをうしなわず、客観的に見なさい、努力しなさいってことだろう。
こういう「人間力」があって、信頼感を得て関係構築ができ、長く働いていけることとなる。
以上4つのポイントについて述べてみました。長く働くために必要な要素はいろいろな面から様々なポイントが出てくると思う。
重要なことは、自分のキャリア、特に終盤のキャリアは、会社まかせではなく、自分で計画、選択していかないといけないということだ。
そうした意味で、キャリアプランニングも(シニア世代になると)ライフキャリアという言葉になってきている。
人生いつまでもキャリアプランニングが必要なのだ。
次回はこのライフキャリアについて説明していきたい
参考文献
「リーダの人間力」ヘンリークラウド 日本能率協会マネジメント
「ワークシフト」リンダ・グラットン プレジデント
「Me2.0」ダン・ショーベル 日経BP社
「40歳からの会社に頼らない働き方」ちくま書店
本「ライフシフト」がベストセラーとなっている。
日本でもいくつか講演をしており、私も昨年の講演を聞く機会を得た。
リンダ・グラットンは、この前に「ワークシフト」という本で、テクノロジーの変化、グローバル化、長寿化が社会に変化をもたらし、
働き方も変わることを説いた。
「ライフシフト」は、そのうち長寿化に伴い、「働き方」どう変化していくのか説明している本だ。
本「ライフシフト」の副題は、「100年時代の人生戦略」だ。
研究によれば、2007年に生まれた日本の子供の50%が、107歳まで生きるようだ。
2007年で、107歳 2114年の話で2017年の私には関係ないと思ったら大間違い。まさに100年ライフはいま訪れようとしているのだ。
ちなみに、厚生労働省が発表している、平均寿命の2007年の値を見てみると、0歳児の平均余命は、男性79.19歳、女子85.99歳となっている。本で言っている107歳とは20歳以上の大きな差がある。
(ちなみに、今年の平均寿命が84歳にいうのは、あくまでその時の0歳児における平均余命を指す(らしい。))
この差は、平均年齢の計算方法が違い、この本は、コーホート平均年齢というものをもとに計算している。
・ピリオド平均年齢・・・・生まれたときの平均余命は変わらない前提で計算した平均寿命。通常言われる平均寿命がこれ(厚生労働省もこの平均寿命)
・コーホート平均年齢・・・進歩に従って、平均寿命が上がっていくことを考慮して、計算した平均寿命(ピリオド平均年齢は、各年齢ごとの現在の死亡率をもとに計算しているようで、コーホートは年齢を階層別にして、その時代の死亡率をもとに計算するようだ。)
***本の仮説が正しいか、厚生労働省の平均寿命と簡易平均余命表をもとに検証してみた
(あてはめ方としては乱暴だと思いますが・・・)*****
平均寿命=その年の0歳児の平均余命なので次の例を見てみよう。
例えば 1960年生まれの方 2015年(平成27年)55歳になった方をモデルとします。
1960年の平均寿命は、厚生労働省の数字を見ると、 男性 65.32歳、女性 70.19歳
2015年の55歳の方の平均余命は、厚生労働省の数字を見ると 男性 27.89年 女性 33.54歳となっている。
1960年平均寿命と2015年平均余命を見ると
男性 65.32歳→82.89歳(17.57年差)
女性 70.19歳→88.54歳(18.35年差)
(もちろん、これは0歳~55歳までの死亡率を無視するとということになるので、ちょっと乱暴でしょうが・・)
同じレベルで違いがあるとすると、2007年生まれで例えば55歳まで生きた方は、本の言うとおり、100歳を超えてくるということになる。
(もちろん、これも平成27年の値なので、現在55歳の人も、あと20年たてばまた余命数字が変わってくるだろう。)
また本では、平均寿命の延びというものがほぼ一直線で、減速ペースが見られないこと、この平均寿命は110歳~120歳ぐらいまで上昇しつづけ、その後伸びが減速するそうだ。
それでは、この本の仮説が正しいとして、2017年○○歳の人は一体何歳まで平均して生きられるのか逆算してみた。
前提:2007年生まれた子は平均107歳まで生きるとする。
年齢の伸びは、1年の平均3ヶ月伸びているとする。→4年で1歳(1年0.25歳)寿命が短くなる、長くなると計算
2017年での年齢 | 平均寿命 |
0歳 | 109.5 |
10歳 | 107 |
20歳 | 104.5 |
30歳 | 102 |
40歳 | 99.5 |
45歳 | 98.25 |
50歳 | 97 |
55歳 | 95.75 |
60歳 | 94.5 |
65歳 | 93.25 |
70歳 | 92 |
75歳 | 90.75 |
80歳 | 89.5 |
85歳 | 88.25 |
単純に計算すると、現状の85歳の人は、半数は88歳以上生きるということになる。
2017年 85歳~90歳の人口は501万人、 (ざっくり見て)85年前 1930年の0~4歳児の人口を調べると、901万人
(これまたザックリで)半分近くが85歳以上となっていると言える。
こう見てみると、100年ライフは、上の表からすると、まさにそこに来ているのだ・・・
(ちなみに、私は現在55歳で、85歳で人生設計していたので我ながらちょっと驚いている。さらに10年とは・・)
本では、健康寿命も伸びると書いている。
昨日の日本経済新聞においても、現在の高齢者においては 10~20 年前と 比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が 5~10 年遅延しており、「若返り」 現象がみられていること、現在75歳の歩行スピードが1992年の65歳の歩行スピードがほぼ同じという研究があることなどから、健康寿命が増えているのは確かだろう。
ただ新聞によれば個人差も大きいとのこと。
確かに昔に比べると健康に対する意識やかける時間も増えているが、気にしている人と気にしない人の差もあるように思う。年齢を重なるごとに健康差は大きくなっているのかも知れない。
さらに、重要なのは認知証だ。現在の厚生労働省の値では、認知症の人口比率は、65歳~69歳 1.5%、85歳以上 27% というのが現状となっている。本では、認知症は、現在研究中のテーマで20年後には期待できるのではないかと述べ、認知症問題も緩和されるとしている。
(平成28年版厚生労働白書)によると、1950年時点では65歳以上の高齢者1人を10人の現役世代で支えていたのが、2015年に は65歳以上の高齢者1人に対して現役世代2.1人へと急激に減少している。今後も支え手は減少し続け、2050(平成62)年には1.2人の現役世代で65歳以上の高齢者を支える見込みとなっている。 仮に20~69歳を現役世代人口、70歳以上を高齢世代人口として計算してみても、 2060年には高齢者1人に対する現役世代の人数は1.6人まで減少する見込みとある。これはもうどう考えても、制度として成り立たない状況になってくる。 受給年齢のさらなる引き上げ(現在の65歳から70歳への引上げ)、受給額の低下などの対応をせざるを得ない状況で、引退期間が長くなれば、お金が足りないという事実を突きつけられる。つまり、・・
今までの3ステージ型の人生(教育→労働→引退)から、マルチステージ化していく、
途中で学びなおしの期間が必要となり、余暇をリクリエーションではなく リ・クリエーション(再創生)として使うべきと説いている。
本書では、マルチステージの例として、下記のステージが生まれてくると紹介しています。
・エクスプローラ・・・(探検家)・・・1か所に腰を落ち着けるのはなく、身軽に動き続けるステージ
・インディペンデント プロデューサ→自分の仕事を生み出す人、旧知のキャリアから外れて自分のビジネスを始めるステージ
・ポートフォリオワーカ→週3日は会社、週1日はコミュニティで働くような一つの働きに集中するのではなく、並行的に活動していくステージ
もちろんこの3つのステージは、あくまでも例で、重要なのは、
・一律的な生き方でなくなるということ
・過去のモデルは通用しなくなり、人生のどこかに実験的なものが入ってくる
・そして、人それぞれの人生を選択できる時代ですよと説く。
長寿化は、時間の贈りもので目的意識をもって有意義な人生を形作るチャンスであり、変化を予期して行動することが大事と説いている。
そのために、例えば自分の今の人生を80歳、90歳から見つめたりして、人生計画と自己内省の必要性を説く。
私は何者か、私はどのように生きるべきかという問いに答えられるのは、本人しかいない。
重要なのは、主体的に選択することであり、どのような選択がどのような結果をもたらすか理解する必要があると結論づけている。
本書が言うように、変化を前にどのように生きていくのか、どう働いていくのかを決めるのは本人しかいない。
現状の制度では、会社は60歳(雇用延長で65歳)までが限度であり、会社はあなたを終身サポートしてくれるわけではない。
多くの人は60歳、65歳から自分で生きるすべを探さなくてはいけない。年齢としても、そこから探すとなると、どうしても今までスキル・キャリアを捨てざるをえない場合が増えてくるだろう。
そうしないためには、現在の自分の価値・スキルを市場価値化(会社以外で通用するスキル)する必要が出てくる。
100年時代の働き方として、私が提唱したいのは、会社にいるときから、暫時自分の価値を「市場価値化」していく実験を行っていく生き方だ。
そうすえば、定年への準備もできるし、現在雇用している企業も柔軟な雇用形態をむすぶこともできる。外部で自分の価値を試したり、自分のスキルアップも図れるし、自分の会社を外部から捉えることにより、現在の会社の改善点を見つけ出せることであろう。社会も本人のスキルを長くいかせ、労働力不足やスキルのアンマッチを和らげられることができる。
そんな社会を実現できればと思う。
ブレインソーシングコンセプト
参考文献
リンダ・グラットン アンドリュースコット著 東洋経済 「ライフシフト」
昭和戦後史 「男女別平均寿命」 http://shouwashi.com/transition-longevity.html
厚生労働省 「平均寿命早見表」 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
厚生労働省 「平成28年版厚生労働白書」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/
日本経済新聞 平成29年2月19日版
博報堂の生活総合研究所では、「生活定点」という資料がオープンにされている。これは1992年から隔年ごとに1500項目にわたって調査し、定点観測を行いながら、意識の変化を見るデータとなっている。
(ここには、衣・食・住等 21種類のカテゴリのデータがまとめられているので、興味がある方は見てください。)
今回はこのデータをもとに、50代、60代の働くことに対しての意識と、長く働くためのポイントを2回にわたってお話しできればと思う。
この「生活定点」のデータより、まず「希望のリタイア年齢」を見てみよう。
対象世代 |
希望リタイア年齢 65~69歳と考える人 |
希望リタイア年齢 70歳以上と考える人 |
50歳代 | 39.3% | 27.9% |
60歳代 | 32.7% | 48.6% |
この調査だと60歳代の半分近くは、70歳以上も働きたいと考えているようだ。
そしてリタイアを後ろに伸ばしたい(長く働きたい)という数字は50歳代より60歳代のほうが大きく、年齢が上にいくほど、高くなっている。
しかも60歳代のリタイア70歳代の数字は前回調査から5.9%も増加しているのだ。
年をとると、さらに長く働きたいと思っているということだ。
さらに50歳代の労働観ってどんなものなのか、「生活定点」からとってみると、
・やりがいよりも安定性 26.2%
・やりたい仕事なら規模にかかわらない 57.3%
・同じ会社で仕事を続けたいと思う 52.8%
・今、自分の望む仕事についていると思う 36.1%
数字を見ると、規模や、安定性でこだわらず、自分のやりたい仕事をしたいと思っていながらも、できれば同じ会社で長く働きたい。
現状、自分の望む仕事についているわけではないが 大きな変化は望まないと、一見矛盾するような、すこし迷いのある状況であることが感じられる。
では現実の年齢ごとの就業率がどのくらいなのだろうか。
内閣府のデータ(平成24年版)をみると70歳~74歳の就業率は、22.8%、75歳以上では、8.3%となっている。
現状ではこの数字は増えていると思うが、それでも現実と希望では、20%程度差があることになる。これは改善されていくのか。
企業も年金支給年度の延長に伴って、雇用期間の延長をしてきた。
(定年年齢を60歳から65以上にあげた企業は、中小企業では16.9%、大企業では8.2%、大企業が継続雇用制度で対応している。)
企業にとっては、今までと同じ処遇、制度で延長というのは選択しづらい。若手に対してのポストはなくなるし、組織としての新陳代謝も
妨げられてしまう。コストも増える。そのため、「継続雇用制度」という新たな制度を設けて、対応しているということだろう。
(そう考えると定年そのものを延長した企業に比べ、「継続雇用制度」対応の企業というのは、60歳代以降を「消極的に」活用と考えていると捉えられるかと思う。大企業のほとんどが定年制度の延長をしていないということは、定年延長のもたらす影響が大きいということだろう。)
「継続雇用制度」の下では、新たな契約となるため、再雇用される際に、下記等の調整が入ってくる。
・給与の調整
・役割、ポジション調整
・時間の調整
・単年度契約の更新
特に、単年度での契約更新ということであれば、更新のタイミングで、役割と成果、給与等比較されるということから、なんらかの選別と時間や給与の調整が入ることとなる。(無論、制度的には企業は、希望すれば、65歳までは延長しないといけないことになってますが・・)
私も企業人事部門対象のシニア対応のセミナに出たことがあるが、大手企業の人事担当者から、定年後のシニアの再雇用について、残ってほしい人に残ってほしいといった話がきかれた。そう、全員に残ってほしいということではなくて、会社に貢献できる人にのみ企業は残ってもらいたいというのが本音といったところだろう。
これから超高齢化社会を迎えるにあたり、シニアのスキルを活かしていくことが重要になってくる。
シニアと雇用の課題は、雇用している企業側の問題だけではなく、我々自身の課題でもある。
現実を前に、定年を迎える50歳代は長く働くために、何をしていくべきなのか、会社の制度に「おんぶにだっこ」では済まない状況になってきているというのが事実だ。次のブログでは、長く働いていくための、ポイントを私なりに述べていきたいと思う。
参考文献・資料・データ
博報堂 生活総合研究所 生活定点
内閣府 高齢者白書(平成24年)
中高齢者雇用の現状と課題 nippon.com 今野浩一郎
定年年長.com
平成28年「高年齢者の雇用状況」集計結果